なんでみんな学校に行くの? 西原理恵子
300号記念特別インタビューには、マンガ家・西原理恵子さんが登場。Fonte子ども若者編集部が自身の悩みや思いなどを打ち明けながら、西原さんに不登校について、親子関係について、働くことについて、などのお考えをうかがった。
――不登校についてはどう思われていますか?
なんでみんなは学校に行ってるのかな~、って不思議なんです。そもそも、公立だろうが、私立だろうが、アルバイトより勉強になる学校ってないでしょ。
ただ、学校に行かない人が、学校に行きたい人と争っていてもしょうがない、とは思ってます。やっぱり学校に行かなければ、マイノリティだからいじめられます。横から「こうあるべき」ということ言ってくる人がいるでしょう。そういう人と言い争っても不毛ですよ。「学校がなにより大事」って思っている人は、もうそういう文化を持っている人ですから。
そういう人と争うのは、先祖の供養中に「幽霊なんていないんだ!」って、仏壇をひっくり返すことといっしょ(笑)。行かない人たちどうしで力を持つのが一番じゃないかな、と思っています。
――不登校の子を持つ親については?
親御さんに対して多く思うのは、子どもより先に親が何を不安がっているのかを解決したほうがいい、と。何を言ってもお母ちゃんが「そんなことないです! ちゃんとやってます!」ってギャーギャーしちゃうことが多い(笑)。小児科で働く看護師さんに聞くと、「まずはお母さんを落ち着かせるのが仕事」だと言ってました。親がつらいと子どももつらいでしょうね。だから、ある程度の年齢まで、ちゃんとひきこもって親を拒否している子もいますが、それはそれでアリだと思うんです。
ただ、たいがいの親はしょうがないかな。人間って、みんなバランスが悪くて、どっかしら病気なんです。とくに母親の場合は、子どもに何かあったら、世界中から「母親が悪かった」と言われる。だから、「母親」という病気を持ってしまうんです。
だから、子どもは、三食を食べさせてもらってることに感謝しつつ、ある程度の年齢まではお母ちゃんを拒否して、その後、親を捨てて出ていく。それが一番じゃないですか。
――私の父はお金がなくてもギャンブルをし続けてます。どうしたら?
私も最初の父親をアルコール依存症で、二番目の父親はギャンブル中毒で亡くしました。二番目の父親は、私の貯金まで全部持っていきました。
あなたのご家族は、お父さんが病気だということに気づいていますか? 病気はサイエンスでしか看ちゃいけません。家族は素人だから看ちゃいけないんです。あなたがガン患者を看たら、知識不足でかならず病状を悪化させてしまいます。それと同じで、家族が面倒を見るとよりお父さんを悪化させます。
お父さんが、わけのわからない行動をとったり、いくら注意をしても困らせるのは病人だからです。40度の高熱をだしている人に「お前には根性がない」って言ってもしょうがないでしょ(笑)。病気なんです。万全じゃないんです。家族が自覚しなきゃいけない。
どうしても素人だと「あなたも悪かったんじゃ?」とか、とんでもないことを言い出してしまう。一番有効だと言われているのが、同じ傷、同じ経験を持った人たちや家族と話し合うことです。そこには同じ病気から切り抜けた人がいます。サバイバーと言われている人たちですね。そういう、うまくいった経験を聞くのが一番いい。みなさんのようにつながっていれば、いい医者もとんでもないバカ医者も知っているでしょ。私も自分か家族がアルコール依存症になったら、どこの病院のどこの部屋に行けばいいのか、わかってますから。
だから、家族は後方支援だけ。どんなに愛していても、いったん関係を切らなくてはいけないんです。
――関係は切らないといけないんですか?
それが特効薬です。でも、ほとんどが間に合わなくて死ぬから(笑)。それもしょうがない。
私も父がすごく好きでしたが、父が首を吊って亡くなったとき「死んじゃったほうがよかったな~」と。だって、生きている間、すごくしんどそうでしたからね。
人間はかならず病気になって死にます。それがガンや交通事故じゃなくて、たまたま早かったという割り切り方をしないと。親に問題があると、子どもは人よりちょっと早く大人にならなくゃいけない。でも、同じような境遇の人は世界中に山ほどいます。今回、家族とはご縁がなかったということで別れましょう(笑)。
よどむときつい
この先、あなたはなぜ自分がこんな状況になってしまったのか、考えるときがくるでしょう。でも、その原因究明はするべきじゃありません。原因を究明をしても、誰かを悪者にして終わるだけ。誰も助からない。明日、どうやって飯を食うかのほうが、よっぽど大事です。だって、立ち止まったらかならずよどむんです。よどむときついんだ。自分を苦しめてきた存在が3Dになって、いつでもよみがえってくる。