「最低限、屋根、ごはん、お風呂だけでOK」親が限界を越えないために知っておきたいこと
不登校の子どもを支える親御さんのなかには、先の見えない不安などによって追い詰められてしまう方もすくなくありません。どのような心構えでいれば、すこしでもラクな気持ちでわが子の不登校と向き合えるのでしょうか? 子どもや親と対話を重ねてきた「海老名こころのクリニック」院長・桑山紀彦先生にお話をうかがいました。
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なぜ、親はしんどいのか?
――不登校のわが子を見守っているうちに、先の見えないトンネルのなかにいるような気持ちになって徐々に追い詰められていく親御さんがたくさんいらっしゃいます。日々、クリニックでさまざまな親御さんと接するなかで、どのようなことを感じていらっしゃいますか?
わが子が学校へ行かなくなって、苦しまない親御さんはすくないと思います。親がしんどくなってしまう原因は大きくわけて2つありますね。
1つは、まわりからの目。
同調圧力の強いこの日本において「あそこのお子さん、学校行ってないんですって」という目で見られることをすんなり受け入れるのは、本当に難しいことですから。夫から「お前のせいじゃないのか?」と責められているお母さんもいます。社会もしくは家庭のなかで、自分がどう評価されているのかを考えてしまうのは、苦しいことですよ。
2つ目は、子どもの生活や精神状態に対する不安です。
学校へ行かなくても、勉強や散歩をしながら楽しそうな顔で規則正しく暮らしていれば、親御さんは安心でしょう。でも、多くの不登校の子どもたちは昼夜逆転をしたり、部屋にひきこもったり、イライラしたりしながらすごしているわけですよね。
そんな不安定なわが子を見ているうちに、親御さんが追い詰められていくのもよくあることです。
うまくいっている家庭は2割
とくに、お母さんは自分の体から生まれた存在と向き合っているので、お父さんよりも責任を感じやすいという側面がありますね。
その一方で、お父さんたちのなかには子どもに対して「なんで休むんだ!」と詰め寄ったり、無理やり連れて行こうとしたり、行かないとわかった時点で関心を失ってしまったりする人がたくさんいます。自分自身が気合いと根性で乗り切るような仕事社会で生きているため、子どもにも根性論で接してしまうのでしょう。
お父さんが状況をよく理解してお母さんを孤立させていない家庭では、お母さんに余裕があります。夫婦の仲がよくて、家族みんなで取り組めれば、不登校はいい方向に向くことが多いんですよ。
でも実際のところ、うまくいっている家庭は2割。残りの8割の家庭ではお母さんが孤立していたり、お父さんが煮詰まっていたりするのが現状です。
不登校の子どもの多くは、自分のせいで両親が不仲になっているのではないかと気にするもの。そこから悪循環が生じてしまうこともあるので、「夫婦仲良く!」というのは声を大にしてお伝えしたいのですが、なかなか難しいですね。
――「親は周囲を頼って」とよくいわれますが、孤立無援に陥ってしまうこともあります。誰を頼るのがベストなのでしょうか。
じつは、いちばん頼れるのは不登校の本人です。