子どもの命を奪った「風の子事件」から見える、現代社会への問い
1991年7月30日、広島県三原市の小佐木島にあった民間施設「風の子学園」で、同学園に通っていた当時14歳の少年と16歳の少女の2人が熱中症により死亡する事件が起きた。事件発生から30年、「風の子学園」事件をふりかえりつつ、不登校の今を考える。
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「風の子学園」は不登校や非行などの子どもを対象にした宿泊型施設だった。親元を離れ、自然に囲まれた環境のなか、座禅をしたり、
馬などの動物を飼育する体験活動ができると呼びかけ、入園者を募っていた。
そうしたなか、事件は起きた。喫煙の懲罰として、少年ら2人は手錠をかけられ、園内にある鉄製の貨物コンテナ内に監禁された。真夏の炎天下、窓もない密閉されたコンテナ内の温度は40度以上に達していたとされており、そのなかに40時間以上にわたって監禁され、命を落とした。
「風の子学園」で行なわれていたのは、教育や指導とは名ばかりの虐待行為であり、けっして許されるものではない。
ただし、子どもを矯正する目的で活動していた民間施設において、子どもが死亡する事件は「風の子学園」にかぎった話ではない。「不動塾」「戸塚ヨットスクール」「アイ・メンタルスクール」などがある。
「首縄」は過去か
「風の子学園」事件を考える際、もうひとつふれておきたいことがある。不登校の歴史のひとつとして「首縄時代」と呼ばれていた時期がある。1980年代のことだ。「首に縄をつけてでも学校へ戻すこと」がよしとされ、自宅から子どもを強引に連れ出す事例があいついだ。