「不登校でかわいそう」? この子の「学びへの愛」を見てほしい
フリースクールは、日本の学校教育に馴染めない子どもの居場所でもあります。
フリースクール運営者・土橋優平さんは、「なんのために学ぶのか」を置き去りにした「やらされ学習」に危機感を抱いています。
不登校の女子中学生が体現する、他者を幸福にする学びとは?
(連載「出張版お母さんのほけんしつ」第49回・写真は土橋優平さん)
前回の記事では、フリースクールの価値についてお伝えしました。今回は「人は何のために学ぶのか」というテーマで、ある事例とともにお話しします。
8種類の「悲しい」を使い分ける
私がその女の子に出会ったとき、その子は中学生、完全不登校の状態でした。
静かな印象で、その笑顔にはまだ不安が色濃く残っていたように思います。同年代の子どもたちの輪の中に入っても適度に距離を保ち、でもその温厚さと優しさ、周りへの気遣いのできるキャラクターがとても慕われる子でした。
実はその子は、親の仕事の関係で海外での生活が長く、英語がペラペラでした。
その英語力はなんとも驚くもので、例えば「悲しい」の英単語をホワイトボードに書き始めたと思えば、スラスラと8個もの語句が並びます。そして1つ1つの微妙なニュアンスの違いを、使用する場面に分けて、わかりやすく説明してくれるのです。大人顔負けの英語力です。
それもそのはず。彼女はTOEICで、990満点のうち900点を超える点数を叩き出します。TOEICは、企業の採用にも影響のある実践的な英語力を測定する英語の試験です。900点台をとれるのは上位4%程度、海外で仕事ができるレベルと言われています。
そんな彼女が教える英語は、とてもわかりやすく、奥深いものがあります。
英語が好きであることはもちろん、海外の文化にも関心があるので、その英単語が生まれた背景を教えてくれたり、スマホの画面に映った海外の景色とともに身振り手振りを交えて、楽しそうに話をしてくれたりするんです。
「英語だけでは認められない」 本当にそれでよいのか?
彼女はあるとき、「医療の論文を読めるようになりたい」と言って、自分で医療用語を勉強し、論文をネットで読み漁るようになりました。
みなさん、思い出してください。彼女は不登校です。
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