【連載第3回】不登校の原因を説明できる子どもはいない!
「3分で読める不登校の基本情報」をお届けする本連載。
不登校の子どもと関わるすべての「多忙な大人たち」のために、不登校の基本の「き」をご紹介します。
第3回は「不登校の要因」。
今回も、さっそく結論です。
文部科学省の調査から「要因」が消えた?
文部科学省は毎年秋に、前年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を公表しています。
令和4(2022)年度までの調査結果には、「不登校の要因」という項目がありました。
しかし、令和5(2023)年度の調査結果では、「不登校の要因」に代えて「不登校児童生徒について把握した事実」という項目が掲載されています。
それぞれの項目をまとめたのが、次の2つの表です。
調査報告に見る「不登校についての認識の変化」
調査項目の名称が変わっただけでなく、不登校についての認識の変化が見られます。
1. 客観的事実の提示
まず、調査項目の名称から見える変化です。
令和4年度までの「要因」は、学校から見た「要因」であって、不登校の子ども自身や保護者の認識とはズレがあるとの批判があります。
令和5年度調査では、学校が把握している客観的事実が報告されています。選択肢を「(情報/求めや)相談があった」とすることで、回答者の主観による選択を防いでいます。
2. 個々の児童生徒の事情が複雑であることが前提
令和4年度調査では児童生徒1人につき「主たる要因」1つ、それ以外のものを2つまで選択可としています。
令和5年度調査では、回答の選択数に制限を設けていません。個々の子どもをとりまく事情が複雑であること、それが不登校につながっているかどうかは問わないことが前提になっています。
3. 選択肢の分離
従来「本人に係る状況」とされてきた2つの選択肢について、取り扱いの変化を見てみます。
■「生活リズムの乱れ・あそび・非行」
令和5年度調査では、「生活リズムの不調に関する相談があった」「あそび・非行に関する問題の情報や相談があった」に分けられました。
生活リズムの不調は、あそび・非行とは無関係な子どもにも起こります。体調不良等が原因で起こるケースも少なくありません。子どもの状況を知るうえで、従来よりも適切な選択肢になったと言えます。
■無気力・不安
この選択肢には、「不登校は子ども本人の気力の問題か」という批判があります。
令和5年度調査では「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」「不安・抑うつの相談があった」に分けられました。子どものメンタルヘルスへの注目度がやや高まったものの、依然として本人の「やる気」が調査対象になっています。
抑うつ状態による「やる気」の減退の実態等、さらに丁寧な調査が求められます。
気持ちの言語化は、大人でも難しい
文部科学省の最新の調査結果でわかるのは、「学校が不登校の児童生徒について何を把握しているか」です。不登校の要因は、実際に体験している子ども本人でなければわかりません。
しかし、不登校の要因を特定し、理路整然と説明できる子どもはほとんどいません。子どもに「学校へ行きたくない理由」を尋ねても、あいまいな答えが返ってくることのほうが多いのです。
自分の心に起こっていることを言葉で説明することは、大人でも難しいものです。
それを物語る、便利な表現があります。
「もやもや」。
あなたは今週、何回自分の気持ちを「もやもや」で済ませましたか?
〈参考〉
令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
次回は「不登校と学習」に注目します!
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