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「今のオレを肯定するな」 優等生だった私が高校の卒業式を控えて直面した葛藤

中学校の卒業式では、生徒代表として答辞を読み上げた古川寛太さん。進学先の高校で不登校になり、通信制高校に転校した。その後、高校の卒業式を控え、式典時に流す自身の将来について語るビデオの撮影に臨んだ古川さんは、学長から投げかけられた言葉に愕然としたという。(連載「前略、トンネルの底から」第10回・写真は古川寛太さん)

* * *

 通信制高校の卒業まであと半年、仲よしごっこなんてしなくても単位を取りさえできればなんでもよかった。いや、それすら建前かもしれない。とにかくルールに則った”所属”をすることで、ふつうの、どこにでもいる、目立たない高校生になりたかった。

 「一応、学生です」と、伏し目がちに自己紹介をするのはもうやめにしたかった。同族はいらないし、共感もいらない。文化祭のビラを配らずスマホをいじる男子も、グループワークに参加せずネイルをなでる女子も、行事準備の段取りが悪い先生も、みんな嫌いだった。いっしょにしてほしくなかった。

 この場にいる自分を誰にも肯定してほしくなかった。でもそれを叫ぶ勇気もガソリンも、俺にはやっぱりなかったのである。

「よいビジネスマンになりたい」将来を語る私に学長が投げかけた言葉

 年末に試験をクリアすると、あっというまに卒業がやってきた。最終月は卒業式で流すビデオを制作するらしい。一人ひとりが「将来どんな大人になりたいか」というテーマで10分ほどしゃべったものをつなぎ合わせる。

 とくに内容を準備することなくカメラの前に立った。「よいビジネスマンになりたい」みたいなことを話したと思う。よく覚えていない。撮影が終わると、カメラマン兼インタビュアーを務めていた学長が俺に向かって言った。

【連載】前略、トンネルの底から
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