「日が暮れるまでトイレに居た」高校入学早々に不登校になった経験者がトイレに隠れていた理由
「休み時間なんて、息苦しいというレベルではなかった」。高校入学早々に不登校になった古川寛太さんはそう言います。学校において古川さんが逃げ込む場所、そこはトイレでした。1日中トイレにこもっていたこともあるという古川さんに、当時のことを書いていただきました。(連載「前略、トンネルの底から」第11回・写真は古川寛太さん)
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この連載でもたびたび話していることだが、俺はよくトイレにこもっていた。学校はもちろん、外の施設でも、だ。
たしかに、不登校によって生活リズムは崩れていたが、毎日毎日、何時間もトイレに居座るほど健康を損ねていたわけではない。用もなくトイレに滞在していた時間は同世代のなかでも群を抜いているだろう。
高校のトイレにこもった理由
ただ安息できるところがほしかったのだ。それでも他人と共存して社会で生きる以上、やっぱり迷惑なわけで。
そもそも不登校になる以前から、俺は校内の人気のないトイレを探して用を足すタイプだった。小学生のころも、中学生のころも、ひとりでいることを誰かに悟られないために。かといって、他人と行動をともにすることは苦手だったので、こそこそと隠れていた。「休み時間にグラウンドで友だちとサッカー」をするようなクラスメイトと対極の位置にいた俺は、昔からその気質があったのだろう。
教室外で弁当を食べるふりをして
高校で早々に不登校になった俺だが、進級のこともあり、高校3年間まったく登校しないという状況ではなかった。しかし、数週間ないし数カ月ぶりに入った教室には、当然ながら俺の居場所はない。休み時間なんて「息苦しい」というレベルではない。
気づいたら、俺は校舎のすみにあるトイレに逃げ込むようになっていた。どこかで昼食をとるふりをして弁当袋を持ち、教室を出る。誰にも見つからないところと言えば、特別教室棟の2階だ。先客がいたら3階へ、そして窓側の個室。たいていの場合、俺はそこにいた。
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