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修学旅行中だけでは修学旅行が完結しない!? 不登校の子どもが修学旅行で不利になる理由とは?

#不登校#行き渋り

2024年9月、「不登校オンライン」では不登校と修学旅行について行ったアンケート調査もとに、保護者のみなさんの思いや、修学旅行不参加の状況、各教育委員会の「修学旅行実施基準」についてご紹介してきました。

保護者の知っている修学旅行と、今子どもたちが直面している修学旅行に、もしかしたらズレがあるのではないか……?

みなさんのから寄せられた声から不登校と修学旅行について考察を重ねるうちに、編集部はこの「そもそもの問い」にたどりつきました。

今回は、学校教育の内容の基本指針となっている「学習指導要領」での修学旅行の位置づけを確認しながら、修学旅行をめぐる課題について、ご一緒に考えます。
2024年版「不登校と修学旅行」、完結編です!

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アンケートに寄せられた「保護者自身の修学旅行の思い出」は?

編集部で行った「修学旅行に関するアンケート」の最後に、保護者ご自身が経験した修学旅行について尋ねました。68人の回答者のうち、75%にあたる51人が「よい経験だった」と回答しています。
さらに、自由回答で理由を尋ねたところ、以下のような回答がありました。

■「非日常」を楽しんだ

親との旅行とは異なる経験ができるし、京都の仏閣などは自分や親の興味からわざわざ足を運ぶことがないので、強制的にでも普段触れることがない場に触れる機会になった。(fldbznevさん)

家族でなく、同級生と旅行できる貴重なチャンス。(ルナイズムさん)

友だちと観光したり、同室で泊まったり、非日常の経験をできて、とても楽しかった。40年たった今でも覚えている。(すーさん)

■事前学習をした

事前に訪れる場所の勉強をし、いまだに覚えている。思い出ができた。(むぎちゃさん)

■決められた行動が苦痛・覚えてない

一方的に全て決められた行き先、そして細かく決められた行動を2泊3日の間朝から晩まで取らねばならならなかった。この期間、先生がたに対して自分の意思や希望を発することが一切許されなかったことが本当につらかった。(アヒージョさん)

大勢での行動で、言われた通りに集合したり移動したりして、ただ疲れた印象だけが残っていて、何を見たかは覚えていないし、特に楽しいわけでもなかった。(いとさん)

強行軍の日程だったので正直内容は覚えていません。でも、夜の自由時間などで友だちと部屋を行き来したり、テレビをみたりした時間は楽しかったなとは思うので悪い経験ではなかった。(なっぱさん)

特別悪い思い出がない。ただ、特別良い思い出もないというか、もはや覚えていない。なので、なくても人生変わらなかった気がする。(Nikiさん)

昼間は学校が決めた歴史的名所をぞろぞろと巡って、夜は先生にバレないように遅くまでおしゃべり……。保護者の修学旅行経験は、「これぞ修学旅行」というイメージに近いものが大半でした(テッパンと思われる「枕投げ」はありませんでした!)。

修学旅行、文部科学省はこう捉えている

ところで、学校教育の中で修学旅行はどのように扱われているのでしょうか。
子どもたちが学校で学習する内容は、文部科学省による「学習指導要領」で定められています。そして修学旅行は、この「学習指導要領」において「特別活動」の「学校行事」の中に位置づけられています。

小学校では「遠足・集団宿泊的行事」、中学校と高等学校では「旅行・集団宿泊的行事」に修学旅行が含まれます。いずれも、「平素と異なる生活環境」で、「自然や文化と親しむ」こと、「よりよい人間関係を築く」ことができるようにする、としています。

そして、修学旅行を含めた学校行事の「内容の取扱い」として、「体験活動を通して気付いたことなどを振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの事後の活動を充実すること」と記されています。

ここまでは、保護者世代の修学旅行と大きな違いがないように見えます。

今の修学旅行は「探求」重視!

しかし、修学旅行に関する報道や、実際の子どもたちの修学旅行のようすを見聞きして、昔との違いに驚いている保護者のかたも少なくないようです。

歴史的神社仏閣の見学だけでなく、戦争・平和に関する施設の訪問や伝統工芸等の体験、民泊体験など、「新しい」プログラムも多く見られます。

また、訪問先で現地の人への「インタビュー取材」「学習発表」などを行う学校もあります。これらは、修学旅行へ行く前のしっかりした学習や準備がないと、プログラムが成り立ちません。

学習指導要領の「解説」を見てみると、文部科学省の考える修学旅行のねらいが、より詳しく見えてきます(以下、引用部分の太字は編集部による)。

……長期にわたって宿泊を伴う体験的な活動においては,目的地において教科の内容に関わる学習や探究的な活動を効果的に展開することも考えられる。その場合には,教科等や総合的な学習の時間などの学習活動を含む計画を立て,授業時数に含めて扱うなど,柔軟な年間指導計画の作成について工夫するよう配慮する……
(『小学校学習指導要領解説 特別活動編』p.125)

……単なる物見遊山に終わることのない有意義な旅行・集団宿泊的行事を計画・実施するよう十分に留意すること。
(『中学校学習指導要領解説 特別活動編』p.101、『高等学校学習指導要領解説 特別活動編』p.94)

上記のほか、中学校でも総合的な学習の時間、高等学校では総合的な探求の時間と関連づけるように書かれています。

参考:文部科学省ウェブサイト「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」


「総合的な学習の時間」や「総合的な探求の時間」は、修学旅行が含まれる「特別活動」とはまた別のカテゴリーの学習カリキュラム(別教科)です。

キーワードは「探求的な学び」。自分たちで課題を見つけ(主体的学び)、ディスカッションしながら(対話的学び)、各教科の学びを「人生」に活かしていく(深い学び)。

修学旅行と「探求的な学び」を結びつけるなら、確かに「単なる物見遊山に終わることのない有意義な」行事になりそうです。そのために、「総合的な学習の時間」「総合的な探求の時間」など、ほかの教科の授業を利用して修学旅行のための学習をするのは効果的と考えられます。

しかし、もちろんそれは、「学校へ行っている子どもたちにとっては」です。
学校に行っていない子どもたちにとっては、「総合的な学習の時間(=修学旅行の事前準備)」に参加していないため、修学旅行への参加のハードルが上がることが考えられるのです。

不登校の子どもの修学旅行準備

不登校の子どもの修学旅行準備について、保護者の方から寄せられた声の中に、興味深いものがありました。

6年生が始まった当初から、不登校ではあったが、修学旅行には参加したいとのことで、担任に相談し、参加可能との返事を得た。 修学旅行はただ遊びに行くわけではなく、事前の学習を基に行動するため、ただ楽しむために行くと思われるのではないかと心配していた。 しかし、事前学習への参加はオンラインでも可能とのことで、オンラインで事前学習に参加し、班行動の相談も登校することなくオンラインで参加して当日を迎えた。(kupoさん)

「不登校でも参加したい」という子どもの希望に、学校側がていねいに対応した例です。「修学旅行だけ行く」ことに、子どもが後ろめたさを感じる必要はないはず。本人だけでなく、この事前準備に参加したほかの子どもたちにとっても、「探求的な学び」に経験になったのではないでしょうか。

もう一つ、本質を突いた声をご紹介します。

息子は鉄道と写真が好きで、県外へも一人で旅に出かけています。 その経験から、学校が決めたスケジュールに基づく集団行動には物足りなさを感じているようです。 修学旅行に関しても、「何の目的で行くのか」「行き先」「行動内容」「スケジュール」「乗り物の時間調査」「乗車券の手配」「予約時のコミュニケーション」など、すべてを子どもたちが中心となって企画する旅ができたらいいと考えています。 『与えられたものではなく、自分たちで作る旅』であれば、きっと思い出に残る魅力的なものになると思います。 教育の現場でも、成功体験や失敗体験をすべて受け入れられる体制と考え方が広がっていくことを願います。(イルカちゃんのママさん)

修学旅行に行く? 行かない? まずは「情報共有」を

アンケート回答から受けた率直な印象は、「修学旅行の理念や目的など、学校から保護者向けにていねいな情報提供がなされているか?」というものでした。

保護者はどうしても、自分の経験をもとに子どもの学習や学校生活について心配したり、悩んだりするものです。それは、決して保護者の責任ではありませんし、それ自体が悪いことでもありません。情報が得られなければ、自分の経験を頼りにするのは当然のことです。

学校の先生がたにとっては「常識」であっても、保護者にとっては「知らないこと」。その溝を埋めていくことができれば、修学旅行に限らず、不登校をめぐるさまざまな悩みに光が射してくるかもしれません。

先生たちが多忙になっていることも、わたしたちの社会の抱える課題の一つです。しかしそのなかで、コミュニケーションがうまくいっている事例も見えてきました。そうした事例が、地域や学校、そして立場の垣根を超えて、もっと共有されるには……?

今、「探求的な学習」を必要としているのは、わたしたち大人かもしれません。
「不登校オンライン」は挑戦を続けます!

 

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