私が苦しんだ「自意識」から解放されるまで【18歳の不登校当事者手記】【全文公開】

#不登校#行き渋り

 自分を否定してしまう、自意識に苦しむ人は多い。塾での人間関係のトラブルをきっかけに、中学、高校と不登校をした凛さん。凛さんも「〇〇してはいけない」という自意識に苦しんできた1人だ。塾で経験したトラブルや悩みとは、いったいどんなものだったのか。凛さんなりの自意識の捉え方とは。執筆いただいた。

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 私は小学生のときに通っていた塾での行きしぶりをきっかけに、その後の中学や高校で不登校を経験しました。思い返してみると、当時の私の苦しみの根本には、他人からの評価を気にしたり、自分の感情を否定したりする「自意識」があったと思います。

 私が人目を気にするようになったきっかけは、小学6年生のころ、塾で特進クラスに進級したことでした。はじめは進級がうれしかったのですが、いざ特進クラスへ通うと私の成績はほぼ最下位。成績で決められる席順では、最後列に座るようになりました。それまで塾は私にとって周囲にすすめられ、なんとなく通う場所でした。しかし、しだいに自分の順位に恥ずかしさと絶望感を覚え、私はまわりの子たちとの成績の差ばかりを気にするようになっていきました。

 また、新たに人間関係でも悩むようになりました。特進クラスに、まわりの人を見張っては陰口を言うような子がいたのです。クラスも今までとちがいヒリついている雰囲気で、私はしだいに人目を気にするようになっていきました。その後、塾へ行くたびに人目を気にする気持ちはふくらみ続け、最終的に私は悪口を言われていないか、つねにクラスメイトのようすを目で確認しないといられない状態になってしまいました。そして目で追うようになったことで「あの子、じろじろ見てきてうざい」と特進のクラスメイトに言われるようになり、私は塾へ行けなくなりました。

 思えば行けなくなるまでも、塾や塾のクラスメイトがイヤで行きたくないと思ったことは何度もありました。でも私は休むことはできませんでした。それは「行かないといけない」「他人をきらってはいけない」という意識が私のなかに強くあったからです。その後、塾から離れても、私のその意識は変わりませんでした。他人を気にすることも目で追うこともやめられず、それが原因で塾と同じような人間関係のトラブルを中学や高校でも経験しました。

先生との出会い

 そんなふうにずっと苦しみを抱えてきた私でしたが、カウンセリングの先生からのある言葉で、最近、自分の意識を変えることができました。先生に出会ったのは、不登校だった高校2年生のころ。私はくり返される人間関係のトラブルに疲れはて、「もうどこへ行ってもうまく行かないんじゃないか」と死を望むほど思い詰めていました。そんななか、家族が探してきてくれたカウンセリングへ行くことにしました。

 先生は私のこれまでの道のりや人を見ることをやめられない苦しさを、ていねいに聞いてくれました。そして話を聞き終えた先生は一言「なぜ、人を見てはいけないのでしょう」と言いました。

 先生の言葉を聞いた瞬間、私は自分の悩みの根本を見た気がしました。きっと先生に出会うまで私はずっと自分の気持ちを否定して、無かったことにしてきたのです。塾のときも中学、高校のときも本当はクラスメイトがこわかったし、苦手だった。そして苦手な人たちがいる場所へも行きたくなかった。でも、その本心を「〇〇してはいけない、◯◯と思ってはいけない」と世間体や自己否定からくる自意識でフタをしてしまっていたのだと思います。そして、気持ちにフタをすればするほどつらい感情にとらわれ、まわりの目ばかり気にして身動きが取れなくなってしまいました。

 もし、私と同じように自意識にがんじがらめになって苦しんでいる人がいたら、自分自身はどうしたいのか、または、どうしたくないのか。プラスな感情もマイナスな感情も含めて、本当の自分の思いを肯定してあげてほしいと思います。私は今、高校でゆっくりと自分のペースで生活できていますが、これからも人目が気になってしまう瞬間はあると思います。でも、それでも自分の本音にフタをせず、生きていきたいなと思っています。(不登校経験者・凛さん・18歳)

(初出:不登校新聞568号(2021年12月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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