不登校になってから会社を設立した子に起きていたこと【小学生からの不登校】【全文公開】

#不登校#行き渋り

メイン画像:ハルユキさん

 小学生の不登校は直近5年間で倍増しています。当事者は、どんな思いで学校から離れていったのでしょう。小学校2年生と5年生の二度にわたり不登校をした14歳のハルユキさんに、その当時の心境を語ってもらいました。

* * *

――学校へ行かなくなった時期を教えてください。

 小学校2年生のときと小学校5年生からです。

――小学校2年生で行かなくなった理由はなんでしたか?

 ふつうにいじめが始まったからです。いじめっ子みたいな人が1人いて、その子を中心とした数人のグループから標的にされてしまったんです。上履き袋を盗まれたり、遊ぶときには「お前は参加するな」と言われたり。

 なぜいじめが始まったのか。きっかけはわかりませんが、彼らからヘイトを集めてしまったみたいなんです。それで1カ月間ぐらいは休んだり、行ったりをくり返していました。

――すごくハキハキと話していますが、つらかったですよね。

 イヤでしたね。いじめられると泣きたくなるんですが、泣くってすごく恥ずかしい。だから泣きたいのに涙をこらえなきゃいけない。それが悲しいというか、悔しいというか、なんとも言えない気持ちでした。

 苦しいことを学校の先生にも相談しましたが、解決はしてくれませんでした。先生は子どもどうしで話をさせましたが、あれってホントに意味がないですよね。一応、いじめたほうからは謝られましたが、そのあと、もっと標的にされちゃいました。

 母親にも相談し、そこからは毎日のように2人で話し合ったんです。お母さんは「悲しかったよね」「次はどう対応したらいいかな」「どう考えてみたらいいのかな」と、いろんな話をしてくれました。そういう話をしているうちに「考え方を変えて乗り越えていこう」としたんです。小学校2年生の際は、それで乗り切れました。

時計の針が進まない

――その後、小5になってまた行かなくなったのは、なぜでしょうか?

 今度はシンプルに学校の授業がきらいになったからです。

 授業は知っていることでも、ずっと説明されます。毎日、あれが続くのは本当に苦痛でした。早く終わらないかなと思って時計を見てすごしましたが、時計の針もなかなか進まない。授業中は気持ちが悪くなるぐらい、つらかったんです。それで、もうこれはダメだと思い、お母さんに「行きたくない」と相談しました。

――今度は、お母さんも納得したのでしょうか。

 納得してくれました。お母さんはすごくオープンな人で、お母さん自身も学校がきらいだったらしいんです。ただ、そのあとで学校の先生を説得するのはたいへんでした。「行きたくない」と先生に伝え始めたころは「学校は義務だから絶対に行かなきゃダメ」と。そういう先生に僕とお母さんとで「無理をしてまで学校へ行く義務はないですよね」と説明したんです。

――精神的に消耗する話し合いですね。

 すごくきつかったですよ。先生と話すこと自体がうれしいことではないのに「学校がイヤです」「授業がきらいです」なんていう話題ですからね。それでも先生とは5回ぐらい話し合いの場を持ちました。最初は苦しかったですが、話し合いを重ねて、だんだんと先生もわかってくれました。

――周囲の説得がたいへんでしたね。

 じつは祖父母との話し合いもたいへんだったんです。僕が学校へ行ってないとわかったとき、おじいちゃんたちは、とっても反対してきました。「学校へ行かなければ将来は仕事に就けなくなる」と言われたこともあります。おばあちゃんなんて、めっちゃ落ち込んじゃったんです。僕からしたら「そんなに暗くなる?」と思うぐらいに(笑)。でもお母さんが何度も話してくれた結果、今では明るい雰囲気でいっしょに暮らせています。

――その後、小6からはフリースクールに通われていますが、家を中心とした生活では、どんなことをしていましたか?

 ゲームをしたり、好きなプログラミングを習ったりしましたが、会社を設立しました。

ハルユキさん

 

親子起業で小学生社長に

――え!! 会社を設立したんですか?

 はい。まだ実績は残せていませんが、ゆくゆくは子どもが楽しめるインターネットサービスを発信していきたいと思っています。でも設立しただけでも、めっちゃたいへんだったんですよ。定款をつくったり、登記申請したり、資金もクラウドファンディングで集めたりしたんですが、そういう一つひとつが……。

――待って待って! 急に話が大人すぎて気持ちが追いつかないです。

 すみません(笑)。親子起業というやり方で、子どもが社長になって会社を立ち上げる方法があるんです。なので役職は、お母さんが代表取締役で、僕が代表取締役社長です。

 会社を設立しようと思ったのは、じつはある社長さんと話すなかで、「学校へ行かない小学生が社長になりたい」と思ったからです。準備はたいへんでしたが、達成感はすごかったです。

――ビックリしました。会社設立なんて大人でもとても苦労することです。最後に不登校をしたことを自分ではどう思うか教えてください。

 不登校を始めたころはやっぱり不安でした。行きたくない気持ちはあるけれども、行かなくてはまずいのでは、と。おじいちゃんたちが将来を悲観したので、それも怖かったです。

 でも、お母さんとたくさん話すなかで気持ちは変わってきました。お母さんは「無理をしてまで学校へ行くのは絶対によくない」と話してくれました。学校へ行かないで仕事をしている人もいるし、子どものうちは、やりたいことをやったほうがきっと幸せだろうな、と。そう思えたので学校については決心がつきました。今では学校へ行こうが行くまいがどちらでもいいじゃないか。そういう気持ちを持っています。

――ありがとうございました。(聞き手・石井志昂、写真・矢部朱希子)

【プロフィール】
(はるゆき)2007年生まれ。小学生のあいだに2度不登校を経験。小学校6年生の際に母親と株式会社を設立し社長に就任。現在は祖父母宅からフリースクールに通っている。

(初出:不登校新聞559号(2021年8月1日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

関連記事

登録から30日間無料!ゲーム依存、昼夜逆転、勉強の話、子どもにしてもいいの…?疑問への「答え」が見つかるウェブメディア 不登校オンライン お試し購読はこちら