不登校で親の過半数が「働き方を変更」収入減も。当事者調査で見えた仕事とサポート両立のリアル
子どもが不登校になったとき、保護者が直面する課題は子どもの心のケアだけではありません。
子どものサポートと仕事をどう両立するかーー
こうした切実で現実的な問題も押し寄せてきます。
学校に代わる居場所としてフリースクールや塾などの民間施設を利用する場合、月額3万〜5万円、年間で数十万円単位の出費が必要になる場合もあります。
一方で、心身ともに不安定なお子さんを支えるためには、そばで寄り添う時間が必要ということも少なくありません。
子どもの居場所や選択肢を守るためにはお金が大切。
でも今この瞬間を乗り越えるためにはまとまった休みもとりたい。
今回の記事では、不登校と仕事のリアルな悩みについて、当事者の声から紐解いていきます。
※本記事は、Yahoo!ニュースエキスパートの記事を転載したものです。
400人のアンケートから見えた「働き方」と「収入減」の課題
不登校のお子さんのための個別指導塾「キズキ共育塾」では、不登校のお子さんを持つ保護者を対象にアンケート調査を実施しました(回答数442件)。
調査の結果、「不登校に伴い転職・退職した」と回答した保護者が全体の22%に上りました。
さらに、不登校に関連して「退職・転職はしていないものの、働き方を変えた(時短勤務・シフト削減・リモートワーク・休職など)」と回答した保護者も全体の33%。
過半数の保護者が、子どもが不登校になったことで自身のキャリアや働き方の変更を余儀なくされたことが分かりました。
また、「退職・転職はしていないものの、働き方を変えた(時短勤務・シフト削減・リモートワーク・休職など)」という146名に対し、働き方を変えたことによる良くなかったことについて尋ねたところ、最も多かったのは「前の働き方よりも、収入が減った」という回答でした。(96件)
子どもの居場所や学習環境を整えるために”出費が増える”一方で、子どもに対応するために労働時間を削ったり離職したりして”収入が減る”という、二重の困りごとが浮き彫りになっています。

事例で見る保護者の葛藤
具体的な葛藤や困りごとについて、不登校の保護者から寄せられた2つの事例をご紹介します。
事例)Aさん:会社に謝る日々と退職(小学生の母親)
子どもが小学1年生で不登校になりました。
当時、私は正規雇用で働いていましたが、子どものケアに時間が必要になり、欠勤や遅刻、早退が増えていきました。
職場では同僚や後輩に事情を説明しましたが、「仕事のしわ寄せをこれ以上求められるのは困る」「夜中にでも仕事を持ち帰って働け」「正規職員として責任感がない」と言われました。
毎日謝ることしかできず、心理的な疲労が大きくなっていきました。
働き続けるために、職場にはリモート勤務やフレックス勤務、休職、子連れ出勤などを希望しました。
子連れ出勤は一度だけ認めてもらえましたが、それ以降はやめてほしいと言われました。「他にも育児を頑張っている後輩たちがいるのに、特別扱いはできない」という判断だったようです。
女性の上司にも相談しましたが、その上司自身が、子どもから「仕事と自分、どっちが大切なのか」と責められながらも、一人で留守番をさせて働いてきたという自身のつらさを話すだけでした。
幼い子どもを一人で留守番させることは危険だと考え、最終的には仕事を辞めるしかありませんでした。
正規職員を退職した後はパート勤務もしましたが、子どもが登校しないため、再び退職を余儀なくされました。現在は仕事をしていません。
仕事を辞めたことで、子どものケアに使える時間や自分自身の時間は増え、子どもにもよい影響がありました。一方で、収入は大幅に減り、キャリアも断絶しました。
さらに、フリースクールの利用料や、勉強の遅れを取り戻すための教材費などもかかります。学校に行けない分、さまざまな体験ができる場所も必要ですが、安心して過ごせる場所は少ないと感じています。
当時は、仕事も育児もどちらも犠牲になっているような状態で、精神的に追い詰められていました。職場に助けを求めても安心して話せる人が少なく、周囲の理解を得ようとする中で、徐々に自分を責める気持ちが強くなっていきました。
休暇やリモート勤務、フレックス勤務などを利用できる職場環境や人間関係が整ってほしいと思っています。
事例)Bさん:子どものサポートを優先し管理職を退いた(中学生の父親)
私はもともと、民間企業で管理職として働いていました。
不規則なシフト勤務に加え、転勤もある仕事です。
他県への転勤の内示があり、本来であれば転勤や単身赴任をすることになりますが、子どものことを考えると、離れて暮らすという選択はできませんでした。そのため、転勤を断りました。
管理職の役職を外れることになり、給料は大幅に下がりました。
子どものそばにいるために選んだことではありますが、働き方を変えたことで、収入だけでなく、仕事の充実感や仕事以外に使える時間も減りました。これまで積み上げてきたキャリアが途切れてしまったという感覚もあります。
現在の給料では生活していくことが難しく、転職活動をしています。
辞める以外の選択肢
もちろん、離職や働き方を変えること自体が悪いわけではありません。家庭の状況や本人の希望によっては、それがよりよい選択になることもあります。
一方で、本当は仕事を続けたいにもかかわらず、子どもの不登校をきっかけに、離職や望まない働き方の変更を余儀なくされている保護者もいます。
こうした状況のなか、選択肢の一つとして注目されるのが「介護休業」です。
「介護」という言葉から、高齢の家族を支えるための制度というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、不登校の子どものケアについても、一定の要件を満たす場合には介護休業を活用できる可能性があります。
一方で、「自分のケースは対象になるのか」「会社にどのように伝えればいいのか」など、実際の活用には分かりにくさも残ります。
こうした課題を受け、2026年8月26日には、不登校の子どもをサポートする石井しこう・Branch・キズキ共育塾の3者が、保護者による介護休業の活用を支援するツールを共同で公開する予定です。
開発に携わったキズキ共育塾の阿部莉久さんは「『辞めざるを得なかった』ではなく、あらゆる選択肢を知った上で、 『自分で、自分の人生と家族のために立ち止まることを選んだ』と一人ひとりの保護者の方が胸を張れる未来をつくりたい」と話します。
今回の調査から見えてきたのは、子どもの不登校が、子どもの教育や生活だけでなく、保護者の働き方やキャリアにも影響を及ぼしている実態です。
「子どもを支えるためには、仕事を辞めるしかない」。
そうした二者択一に陥る前に、どのような制度や働き方の選択肢を用意できるのか。不登校の子どもを支える保護者の就労を、家庭だけの問題ではなく、職場や社会も含めてどう支えていくのかが問われています。
※本記事は、Yahoo!ニュース エキスパートの記事を転載したものです。



