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児童精神科医・さわ先生インタビュー①「発達障害・不登校でも大丈夫?」に揺れる親が“根拠ある安心”を見つけるために

#不登校#行き渋り#さわ先生#児童精神科#発達障害

「発達障害・不登校のうちの子の将来は、本当に『大丈夫』なのだろうか」──。

親御さんなら、心の中で何度も繰り返したことのある問いではないでしょうか。診断や学校、周囲の目に揺さぶられ、不安に押しつぶされそうになる日々もあるでしょう。

そんな親の気持ちに向き合うのが、児童精神科医であり、「発達障害があって不登校」の娘さんを育てる母親でもある、さわ先生です。

この記事では、「全人類、発達はユニーク」という視点から、発達障害にまつわる誤解や診断との向き合い方、そして「完全な自立だけがゴールではない」という考え方まで、さわ先生の経験と専門的な知見を交えてお届けします。

親が子どもの将来に「根拠ある安心」を見つけるために必要な視点とは何か──。そのヒントを、一緒に探っていきましょう。

  

さわ先生

全人類、発達はユニークの意味とは?

― さわ先生は、「全人類、発達はユニーク」とおっしゃっています。これはどういう意味なのでしょうか?

さわ先生:発達障害があるかどうかに関係なく、全人類、全員が唯一無二の存在であるということです。

身長が伸びる、体重が増えるなどの身体的な発達も、精神的な発達も、発達の成長過程は、全員が異なります。

双子であっても、発達の成長過程が全く同じということはありません。

― そもそも「発達」とはどういう意味なのでしょうか?

さわ先生:医学的には、「発達」という言葉は、身体的発達、認知の発達、情緒・社会性の発達などを意味します。

特に発達障害の文脈では、「脳の中枢神経系の発達」を指します。ここに障害が発生することで、認知・行動・社会性などに困難が生じます。

発達障害の確定診断は「人生終わり」でも「全てが解決する」でもない

― 発達障害について、ありがちな誤解には、どのようなものがありますか?

さわ先生:「発達障害と診断されたら全員が障害認定を受ける。学校は特別支援級に行くことを求められる。人生詰んだ、人生終わり」と思っている人が多いですね。そんなことはありません。

また、「発達障害の確定診断がつくかつかないかで、人生が大きく変わる」と思っている人も少なくないはずです。

しかし、確定診断があろうがなかろうが、AくんはAくん、BさんはBさんのままです。

そして、確定診断があればそれで全て解決ということでもありません。たとえば一口にASDと言っても、必要なサポートは人によって異なります。

「確定診断があるかどうか」よりも「何に困っていて、どういうサポートが必要かを考える」ことが大事です。

確定診断があることのメリットとは?

さわ先生:ただ、確定診断があることによるメリットがあることも事実です。障害福祉サービスを利用しやすくなる、自分の状態を知ることができる、学校や会社に合理的配慮を求めることができるなどですね。

未就学児であれば、確定診断がなくても利用できる障害福祉サービスはかなり充実しています。

そして、年齢が上がれば上がるほど、確定診断があった方がサポートを受けやすく、また利用できるサポートの選択肢が広がっていきます。自治体にもよりますが、確定診断がないと利用できないサポートもあります。

他にも、「心情的に、確定診断がついたほうが安心できる」というのであれば、診察を受けるのもアリだと思います。

発達障害と不登校との関連性とは?

― 発達障害は不登校とどのように関係するのでしょうか。

さわ先生:発達障害に限らず、精神疾患は「社会生活にどれくらい支障をきたすか」という観点で診断をしていきます。

学生にとっては、もっとも身近で大きな社会生活は、学校生活ですよね。「発達障害があると、学校生活に支障をきたしやすい」という点では、発達障害と不登校は関連しやすいです。

ただし、「不登校=全員が発達障害」ではありませんし、不登校の原因が必ず発達障害であるとも限りません。学校生活に支障をきたしていない場合でも、発達障害の診断がつくこともあります。

また、学校生活への支障は、不登校だけでもありません。学校には行けるけど、距離感が掴めない、教室のなかを走り回る、対人関係に困難があるなどもあります。

そして、同級生たちと情緒的な関わりがもてない、いじめの対象になるなどで、結果として不登校になることもあります。

発達障害の子には、「普通に当てはめようとしない選択肢」が大切

― 子どもの不登校に悩む親は「全人類、発達はユニーク」という考え方をどう理解するとよいでしょうか?

さわ先生:お好きに理解していただければと思います(笑)。ただ、発達のユニークさゆえに学校が合わないのであれば、親は、「普通に当てはめようとしない選択肢」をもつことが大切でしょう。

そもそも発達障害の(サポートの)考え方としては、「普通に当てはめようしないこと」がめちゃくちゃ大事なんです。

結局、日本の学校は、普通や標準に合わせることが得意な子向けの場所なんですよね。そして、日本の教育は「標準に合わせて、いい子を量産する」というのがあったと思うんです。

でも、その「普通」に当てはまらない子もいるということです。発達のユニークさがゆえに学校生活が合わないのは、その子が悪いわけじゃなくて社会が悪いかもしれないという考えがあってもいいんじゃないですか。

「発達のユニークさがゆえに、知的障害がなくても社会生活に困ることがある」という事実も、「不登校の子どものゴールは、学校に戻すことだけではない」という考え方も、徐々に広がってきています。

「根拠ある大丈夫」は当たり前の価値観を見直すところから

― 親が「不登校でも、発達障害があっても、この子は大丈夫」と本心から信じられるようになるには、どんな視点や行動が役立つでしょうか

さわ先生:大切なことは、当たり前だと思っていた価値観を見直して、「それって本当かなあ?」と思えるようになることです。楽になれると思います。

「学校とは?」「生きるとは?」「勉強とは?」「親とは?」などですね。

ただ、見直すと言っても、過去をすべて否定するのではなく、頑張ってきたことは肯定すべきです。また、親と子どもは別人格なので、「見直した価値観」のすべてを子どもに当てはめることでもありません。試行錯誤を繰り返すんです。

私自身は、経歴を見ればいわゆるエリート街道を進んできています。自分で言うのもあれですけど(笑)。成功という言葉も好きじゃないけれど、周りから見るとそう思う人もいるかもしれません。実際に医者になれているし、なれてよかったと思っています。

そんな私は、「勉強するのが当たり前、いい学校に行くのが当たり前。それが成長」と思う両親に育てられてきました。私自身も、両親の影響でそう思っていました。

しかし、娘たちが不登校になり始めたころから「それって本当かな?」と疑うようになりました。

「学校に行くのって、どういうことだろう?」とか、「生きるということの本質的な意味って何?」みたいなことを、娘を通して考えさせてもらえたわけです。「価値観を疑う」という貴重な機会をもらえたことに感謝しています。

もちろん、答えのない問いなので、私がたどり着いた考え方が正しいというものでもありませんが。

自立の形もユニーク。重要なのは「助けて」と言える心を育てること

―さわ先生は、発達障害のある人は、ゴールとして「障害福祉などのサポートを全く利用しない、完全な自立」を目指さなくてもいいとおっしゃっています。

さわ先生:まず、障害認定があるかどうかに関わらず、目指すべき「自立」の内容は、人によって異なります。

次に、「どこまで頑張るべきで、どこから無理をしないようにするべきか」も、人によって異なります。患者さんを見ていても、線引きは非常に悩ましいです。

そしてその上で、(「サポートを利用しない」という方向で)頑張りたい人は頑張ればいいのですが、それが根性論とか努力の美学みたいになってしまうと違うと思うんですよね。命をかけてまで頑張る必要はありません。

できないときにちゃんと「助けて」と言える心を育むことが重要です。

親も、一人で悩まなくていい、一人で頑張らなくていい

― 「発達障害や不登校の子ども」を育てるなかで、親が「大変だ」「不安だ」と感じる気持ちは自然だと思います。その気持ちをどう扱えばよいでしょうか。

さわ先生:一番言いたいのは、「人に頼ってほしい、抱え込まないで」ということ。

そして、子どものことで不安になったとき、どこまでが親自身の不安で、どこまでが子どもの問題なのか問題じゃないのか、その境界線を見極めることも重要ですね。

学校に行けないことが不安となったときに、事実として学力や社会性の不安はあります。しかし「学校に行かなかったら、将来、引きこもりになるんじゃないか」というのは、親の不安です。そこを線引きできるかどうかが大事だと思います。

ただ、その線引きを一人でやるのは大変です。たとえば私のクリニックにくれば、客観的な視点で「これはお母さんの不安」「これはお子さんの課題で、医学的なサポートが有効になるかも」という線引きや判断を行うことができます。

一人で悩まなくていい、一人で頑張らなくていいんです。いろんな人に助けられて生きていけばいいんです。相談相手が合わないと思ったら、次の人に相談してほしい。最低3人には相談してほしいですね。

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