「プール授業はありません」不登校特化の学校のこだわり#私のための学校選び
「みんなと同じペースで勉強についていけない」
「教室での集団行動が苦しい」
不登校を経験した子どもたちは、「みんなと同じようにできない自分」への違和感や苦しさを抱えていることがあります。
しかし、それは本当に子ども側の問題なのでしょうか。
「子どもが学校に合わせる」のではなく、「多様な子どものニーズに合う学校の選択肢を増やしていく」。
そんな発想で不登校の子どもたちを支えているのが、2024年に開校した学びの多様化学校(旧・不登校特例校)「東京みらい中学校」です。
今回は、不登校オンラインが東京みらい中学校の定野司(さだの つかさ)校長に取材しました。
そこから見えてきたのは、「学校とは何か」を問い直す、新しい教育のあり方でした。

定野司(さだの つかさ)校長
選択肢を広げる学校づくり
定野校長は、「不登校は、あくまで一つの“現象”に過ぎません」と語ります。
不登校の背景には、次のようなさまざまな要因が複雑に絡み合っています。
- 心身の不調
- 人間関係の悩み
- 発達特性
- 学習のつまずき
- 家庭や生活環境の変化
子どもが抱える困難や生きづらさが積み重なった結果として、不登校という形で表れているのです。
しかし、従来の不登校支援では、「どうすれば学校へ戻れるか」という視点が中心になりがちでした。
もちろん再登校が一つの選択肢になることもあります。一方で、今ある学校の仕組みそのものが子どもに合っていない場合、無理に適応を求め続けることが本当に最善なのでしょうか。
定野校長は次のように話します。
「学校に来られない子どもに問題があるのではなく、受け入れる学校側の形に課題がある場合もあります。大切なのは、学校側が多様な選択肢を用意し、子どもが『ここなら合いそうだ』と思える場所を選べるようにすることです」
「東京みらい中学校が目指しているのは、『一つの学校がすべての子どもに合わせること』ではありません。」
「子どもたちが多様であるように、学校側にもさまざまな形や選択肢があり、その中から自分に合う場所を選べる社会です。」
「当たり前」をゼロから見直す学校づくり
東京みらい中学校には、「意図的に廃止したもの」があるといいます。
それは、従来の“学校の当たり前”だけに縛られず、子どもたちが少しでも過ごしやすい環境をつくるための工夫です。
■プールの授業
東京みらい中学校には、プールがありません。
思春期の子どもたちにとって、「水着になること」そのものが大きな苦痛になる場合が少なくないからです。
もちろん、水泳が好きな子どももいます。
だからといって、「水泳を否定したい」という話ではありません。
プールがある学校があってもいい。
一方で、プールがない学校があってもいい。
子どもたちが自分に合った環境を選べるようにするためには、学校側にも多様な形があっていい――。
そんな考え方のもと、プールがない学校をつくったといいます。
■過剰な校則
管理や統制を目的としたルールは最小限に抑えられています。
「みんな同じ」を強く求めるのではなく、一人ひとりの個性や過ごしやすさを尊重する。
その上で、安全や安心を守るために本当に必要なルールだけを残しているといいます。
専門家が“常駐”する安心感
東京みらい中学校の大きな特徴の一つが、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが“常駐”していることです。
- スクールカウンセラー: 子どもの心のケアや不安へのサポート
- スクールソーシャルワーカー: 家庭環境や福祉的支援の相談
- 担任: 日々の学校生活や進路を共に考える存在
それぞれ役割が異なるからこそ、その時々の悩みに応じて、「誰に相談するか」を選ぶことができます。
一人の先生だけに負担や役割を集中させない。
専門職がチームで子どもや保護者を支える体制は、「いつでも相談できる」という大きな安心感にもつながっているのです。
また、教室に入れない子どものために、「チャレンジルーム」と呼ばれる居場所が用意されています。
多くの学校では、教室になじめない場合の居場所は保健室一択です。
しかし、生徒の全員が不登校を経験している東京みらい中学では、
一人で落ち着いて過ごせる場所
小学校内容を振り返る学習スペース
疲れた時に休める空間
など、生徒がその時々の状態に合わせて教室や保健室以外の居場所も選ぶことができます。

教科書以外の学びで育む、生きる力
東京みらい中学校では、「社会とつながる機会」を重視したカリキュラムが行われています。
その一つが、「スキルトレーニング」の授業です。
企業経営者や専門職として働く大人たちを招き、仕事だけでなく、
- どんな苦労をしてきたのか
- なぜその道を選んだのか
- 子どもの頃に何を感じていたのか
といった“人生そのもの”を聞く機会を設けています。
これは単なる職業紹介ではなく、
「自分はどう生きたいのか」
「どんな未来を描きたいのか」
を考える土台づくりにつながっています。
多様な生き方に触れることで、子どもたちは少しずつ、「自分なりの未来」を描く力を育んでいきます。
学校側も多様な社会を
インタビューの中で定野校長は「うちの学校が唯一の正解ではない」と繰り返し話していました。
多様な子どもがいるなら、学校側も多様であっていい。
偏差値だけではない軸があっていい。
そして、その中から子どもたち自身が「ここなら合いそうだ」と思える場所を選んでいける社会であってほしい。
東京みらい中学校が目指しているのは、「不登校をなくすこと」だけではありません。
“学校に適応できるか”だけで子どもを測らない社会。
「子どもたちにも、学校にも、多様な選択肢が当たり前に存在する未来を目指している」と定野校長は語ります。



