不登校で気になる10個の疑問、ある親に全部、聞いてみました【全文公開】

#不登校#行き渋り#不登校の親

 子どもが不登校になると、親としては気になることがたくさん出てきます。そこで今回は、大分県に住む高原元子さん(仮名)に、質問をぶつけてみました。

* * *

――今日は「不登校になったら気になる質問」を10個、お聞きしたいと思います。そのまえに、お子さんがいつから不登校になったのかを教えてください。

 息子は中1の6月終わりごろに体調を崩し始め、7月ごろには学校へ行けなくなりました。もともと真面目な性格なので、学校になじもうと一生懸命で、それまでは所属するバスケ部でもバリバリやっていたんです。

 ところが、朝になると「とにかく気持ちが悪い」「きつい」という感じで、顔も唇も真っ青になっていて……。あとになって起立性調整障害と診断されましたが、最初はどこが悪いのかわからなかったです。とにかく学校へ行けるような状態ではないことはわかりました。

 今は中学3年生になりましたが体調もよくなり、今年6月からはフリースクールに通っています。

――それでは1つ目の質問です。不登校になってから「ゲームやスマホの使用時間」は制限していますか?

 息子がやりたいと言ったことは、なるべくできるようにしてやりたいと思ったので、制限はまったくしていません。とにかく元気になってもらいたかったですし、本人が唯一、楽しそうにやっていることがゲームだったからです。

 一方、スマホを持たせるようになったのは、体調を崩して、息子が家に居るようになってからです。連絡手段として持たせたのがきっかけで、もちろん、ゲームをさせようと思って与えたわけではありません(笑)。でも結果的には、すごくよかったと思っています。息子がハマっていたのはグループで戦う銃撃戦のオンラインゲームでした。いつも決まった人といっしょに対戦していて、グループ内のメンバーには大人も多かったようです。今思うとゲームを楽しんでいるというより、会話をしながら人とのつながりを感じて、気持ちが落ち着いたのでしょう。ゲームを通して、だんだんと笑顔が増えていきました。

 ただ、フリースクールに通うようになってからは、不思議とオンラインゲームをしていません。ほかのことで充実しているからかもしれませんね。

生活リズム、コロコロ変わり

――不登校になって「生活リズム」に変化は?

 起立性調整障害の診断を受けた息子は、午前中はすごく体調が悪いけど、夕方くらいになると調子がよくなるという状態でした。

 最初は夜の2時~3時ごろに寝て、お昼すぎに起きていました。が、だんだんと時間がずれていき、昼夜逆転しながら、がっつりゲームをやる状態に(笑)。私とは真逆の生活リズムになり、朝7時~8時ごろに寝て、夕方すぎに起きるような状態もけっこう長く続いたと思います。

 昼夜逆転がなおったのは、バスケがきっかけでした。息子は小学生のころから、バスケが大好きでした。体調が悪くなり、不登校になってからもバスケ部には在籍したままで、本人も「バスケをやりたい」という気持ちがあったこと、私もわかっていたつもりです。

 そんなある日、年の離れた私の弟が、社会人バスケを始めました。息子はそれを知ると、「バスケをやりたい」と言うようになりました。弟といっしょに社会人バスケへ行くことをすすめても、最初はなかなかその気にならなかったのですが、今は週に1回、社会人バスケへ行っています。

――不登校をしてから「おこづかい」はどうしてます?

 本人が好きなことをとことんできたほうがいいので、ムリのない範囲で買う方針で、おこづかい制は設けていませんでした。 ただ、息子にはほしいものが多くて、やりたいこともけっこうお金がかかることばかり。息子がほしかったのはアニメのフィギュアだったので、一体の値段が高い。おまけに1つ持ったところで、満足しないんですよね(笑)。 そこで、体調が落ち着いてきてからはおこづかい制にしています。

――学校から離れて「勉強」はしていますか?

 不登校になった直後の中1のときは、勉強のことをまったく考えられませんでした。2年生になったとき、不登校の「親の会」でつながった方から「ICT教育が始まるよ」と教えていただきました。そこからしばらくは、ICT教材「すらら」を使用して勉強を続けていました。始まる前は、それほど乗り気ではなかったようですが、中2のときはすごくがんばっていたように思います。

 「すらら」は、アプリ内のキャラクターが勉強を教えてくれるという特色もあるのですが、そのうち「一方的なのがつまらない」と言い出すようになったんです。そこで親の会の方に相談をすると、「じゃあ直接、教えてあげるよ」と言ってくださった方がいて、2年生の終わりからはその方に教わっています。

 息子は「人対人がいい」と言うようになってからは、勉強に対する思いが変わってきたように思います。マンツーマンでの勉強は、フリースクールへ行くようになった今も続いています。

心が落ち着く最善策に

――「保健室登校」はしましたか?

 学習室への別室登校というかたちは選択肢にありましたが、学習室は校内にあるので、そこへは一度も行っていません。

 ただ、2年生くらいまでは学校の駐車場で、担任の先生に会うということを続けていました。でも、だんだんと先生からの要望が増えていきました。先生は毎日登校することがあたりまえの生徒に囲まれながら、クラスを運営しています。

 一方、息子は先生と会うために制服を着て、駐車場へ行くというだけでも、相当な精神力を使っています。息子としては「今できること」を認めてほしかったと思うのですが、登校するのがあたりまえと思っている先生からは、どんどんハードルを上げるようなことを言われました。

 先生としてはハッパをかけているつもりかもしれませんが、息子からすれば「今のままではダメだ」と言われていたような気分だったんでしょう。だんだんと先生と会う機会も減っていきました。

 別室に通う、先生にだけ会う、いろんな方法があると思いますが、子ども自身が落ち着くのならそれが一番よい選択肢なのかなと思っています。

――学校を休む際に「欠席連絡」はどうしていましたか。

 学校への連絡は最初からストレスに感じていたので、私のほうから「学校へ行けるときだけの電話でよいですか」と提案させてもらいました。朝、学校に電話をすると、「今日も行けないんだ」という現実がどんどん自分にのしかかってきて、きつかったんです。これは親にとって、かなりの負担です。

 私の場合は、電話するとだいたい教頭先生が出るんですけど、すごく苦手なタイプだったので、よけいにストレスを感じてしまって(笑)。なので、かなり早い段階で提案しました。

――「担任」とは、どう付き合われていましたか?

 学校とのつながりが薄れた時期に、担任の先生が家庭訪問に来たことがあります。そのとき先生から「学校へ来られない理由があるのかな」と聞かれました。子どもは「先生が納得する答えを出さないと認めてもらえない」と感じたのでしょう。

 息子は案の定、理由を言えなくて、「ありません」と言ってしまったんですね。それに対する先生の返しは、「え? 理由がないなら学校へ来られるよね?」でした。

 息子は先生からの言葉を聞いて「複雑な気持ちを察することができない人だな」「今の自分では認めてもらえないな」など、いろんなことを感じたと思いました。それからは、あまり担任と積極的に付き合うことはしていません。

ママ友とはさっぱりと

――不登校になってから「ママ友の付き合い」に変化はありましたか?

 先生の話や勉強の話など、学校や塾ばかりの話をするお母さんたちとの付き合いはやめました。息子が行かなくなって学校へのグチを私は言い合う必要もなくなりましたし、学校での悩みもないですし。

 でも、息子の親友のお母さんとはつながっていて、お話はしています。自宅は学校から一番遠いところにあるので、同級生のお母さんとスーパーでバッタリ会うことはありません。不登校になると知り合いに会うのがいやだなという気持ちもすごくわかるので、そういうときはスーパーを変えるべきですよね。自分の精神的ストレスは排除するに尽きます。

――ふり返ってみて「こうしておけばよかった」と思うことはありますか?

 ふり返ってみて思うのは、親のエゴをもっと早く捨てておけば、子どもも私もラクだったかなと思います。子どもをどうにかしてあげたいというのが親の思いなのですが、やっぱり段階が必要です。

 最初のころは、ふつうに学校へ行ってくれるだけでいいのに。そう思っていました。でも、何がふつうなのかなと考えるようになってから、すーっとラクになりました。私がラクになったことで、息子もラクになった気がします。それまでは「みんなといっしょじゃないといけない」と思い込んでいたんですよね。

――不登校について「誰に相談」したのが、よかったのでしょうか?

 最初に相談したのは母でした。弟が不登校だったので経験者だからです。とはいえ、同じ不登校でも原因や本人の性格もちがえば、元気になっていく道のりもちがいます。参考になりづらかったのですが、唯一、参考になったのは、「とにかくその子がやりたいことをいっしょに楽しくやった」という言葉でした。

 一方で心のよりどころになったのは、不登校の「親の会」とつながることができ、息子と近い年齢のお子さんがいるお母さんたちに出会えたことです。みなさんが経験されていることや情報を聞いて、落ち着くことができました。

 親の会には不登校だった子たちが来て、お話をしてくれるのですが、彼らの言葉を聞けたこともすごく大きかったと思います。息子はまだまだ闇のなかにいる状況ですが「不登校になっても大丈夫なんだ」と、思えるようになりました。

――ありがとうございました(聞き手・石井志昂/編集・小山まゆみ)

(初出:不登校新聞564号(2021年10月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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