「学校行きたくない」は甘えではなくSOS〜親にできる対応やNG対応を紹介〜

#不登校#行き渋り#学校行きたくない#甘え

子どもが「学校行きたくない」と言い出した、または行き渋りや不登校と思われる状況になった保護者からは、次のような言葉をよくお聞きします。

  • うちの子が学校に行きたくないと言っていて…。これって甘えなんでしょうか。
  • 甘えが原因の不登校には、どう対応したらよいのでしょうか…。

そこで、不登校オンライン編集部が、「不登校と甘え」について解説します(監修・半村進)。結論から言うと、大切なことは次の2つです。

  • 「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」は、甘えではなく(甘えだとしても)、子どもからのSOS
  • 子どものことは、家庭だけで抱え込まず、ぜひ専門家に相談を

この記事を読むことで、保護者としてできることがわかります。

※本文中、同じようなことを何度もお伝えする部分もありますが、それだけ大事なことだとご理解いただければ幸いです。

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半村進

キズキ相談担当 半村進

はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。

【執筆記事・インタビューなど(一部)】

日本経済新聞 /  朝日新聞EduA /  テレビ東京 /  通信制高校ナビ

目次

「学校行きたくない」は、甘えではなく子どもからのSOS

「今日はめんどくさいから行きたくないなー(笑)」などと言いながらも、なんだかんだで登校する…

この記事をご覧の保護者にとって、子どもの「学校行きたくない」にはこうしたイメージがあるかもしれません。

たしかに、保護者に甘えたくて子どもが「学校に行きたくない」と言うことはあります。

しかし、「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」は、甘えではなく、子どもからのSOSだという理解が基本です。たとえ「甘えたい」気持ちも多少はあったとしても、です。

また、どんな子どもでも、どんな子育てをしていても、「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」は起こりえます。

どうか、「保護者の自分が甘やかしていたから…」「もっと厳しく育てるべきだったのかも…」などと悩まないでください。

「わが子の『学校行きたくない』は甘えかどうか」 この問いに意味がない3つの理由

実は、子どもが「学校行きたくない」と言うとき(行き渋りや不登校になったとき)、保護者が「これは甘えかどうか」と考えることには、あまり意味がありません

その代表的な理由を3つ紹介します。

理由①「学校行きたくない」は、さまざまな理由が絡み合っている

まず、「学校行きたくないという気持ち(=行き渋り・不登校の状況)」は、さまざまな理由が絡み合って生じるからです(不登校の主たる原因は、こちらで紹介しています)。

そのため、「甘えが含まれるケース」がないとは言いきれません。

同様に、「このケースは100%甘え」「甘えが原因の大半を占めている」などと断定することもできないのです。

理由②甘えの判断基準が人によって違う

次に、「これは甘えだ」「甘えではない」という判断基準は、人によって異なるからです。

「甘え」という言葉の国語辞典的な意味は、「人の好意をあてにする気持ち」です。(出典:小学館デジタル大辞泉「甘え」)

しかし、辞典的意味がどうであれ、「何をもって甘えとするか」という判断は、人によって異なるでしょう。

そして、「甘え」は測れるものでも、目に見えるものでもありません

子ども自身も「自分がなぜ学校に行きたくない(行けない)のか」を明確に理解・言語化できるとは限りません。

甘えかどうかは、明確に判断できないのです。

理由③子どもへの対応は「甘えかどうか」では決まらない

最後に、保護者の取るべき対応は、保護者による「甘えかどうかの判断」によって決まるものではないからです。

保護者がするべきこと・できることは、「子どものことを保護者だけ・家庭だけで抱え込まず、適切な相談先(こちらで紹介しています)と話しながら、対応していく」です。

保護者だけで「これは甘えだろうか。甘えなら/甘えではないからこうしなくてはいけない」などと考える必要はありません。

また、仮に「甘え」と言い切れるような状況があったとしても、対応は「子どもの実際の状況」によって異なります。この場合もやはり、保護者だけで対応を考える必要はありません。

以上の3つの理由から、保護者が「この『学校行きたくない』は甘えかどうか」を考えることには、あまり意味がないのです

 

保護者にできる、子どもの「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」への対応法

「甘え」かどうかにかかわらず、子どもの「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」にできる、保護者の対応法を紹介します。

ただし、ここでお伝えできるのは「基本の方針(一般論)」です。「あなたの子どもへの具体的な対応」は、③の専門家に相談するうちに見つかっていくはずです。

対応①「学校を休んでいい」と伝える

理由が何であれ、「学校行きたくない」は子どもからのSOSです。

「学校行きたくない」と言う子どもには、まずは、「休んでいい」と明確に伝えましょう

子どもは、「学校に行きたくない自分はダメだ」「学校へ行かないと親をがっかりさせる」と思い込んでいます。

保護者から「休んでいい」と言われることで、子どもは安心して休むことができます。

もう一歩考えを進めて、「今の学校への登校再開は考えなくていい」と、保護者が本心から思えるようになると、「次の一歩」が多様にひらけていることもわかってきます。

「今の学校」以外にも、選択肢が見えてくるのです。

「そうは言っても、本当に休ませていいものか…」と悩む方もいるでしょう。そんな方は、「学校休んだほうがいいよチェックリスト」をご利用ください。簡単な質問に答えるだけで、精神科医からの回答結果が届きます。
■学校休んだほうがいいよチェックリスト

対応②子どもの話をしっかり聞く

子どもの話をしっかり聞きましょう

「学校行きたくないなんて甘え」「みんながんばって登校してる」などと言いたくなるかもしれません。

しかし、「学校行きたくない」と口に出すのは、すでにがんばりきった後であることが多いのです。

悩んで悩んでやっと口に出せたのだと理解して、子どもの話を真剣に聞いてください

ただし、子どもは自分の気持ちを整理できていないこともありますし、気持ちや事実をうまく言葉にできないこともあります。

理路整然とした言葉を求めるのではなく、「悩んでいる」「自分を信用して話をしようとしてくれている」という子どもの状況を受け止めてください

対応③専門家に相談する

子どものことを、保護者だけで対応する必要はありません。

甘えかどうかも、それ以外のことも、「学校行きたくない」という状況については、詳しい専門家に相談しましょう相談先の例は、こちら)。

保護者だけで対応しようとすると、「こんな対応は甘やかしなのでは…」「もっと厳しくした方がいいのかも…」と悩みがちです。そして、悩んだところでよい対応を思いつくとは限りません。

専門家に相談することで、「あなたの子ども」のための具体的な対応方法が見つかっていきます

また、「『学校行きたくない(行き渋り・不登校)』は甘え」という思いをどうしても捨てきれない保護者にとっても、マインドを変えるきっかけになるはずです。

対応④「学校と家庭」以外の居場所・学びの場所を見つける

一般的に、子どもの居場所は「学校と家庭」の2つが大きなウェイトを占めます。学校に行けない子どもは、居場所の1つをなくした状態です。

学校(と家庭)以外にも、子どもの居場所候補はあります。そうした場所で過ごすことで、SOS状態の子どもも、少しずつ元気になっていきます

また、そうした場所では、勉強や人とのコミュニケーションスキルを身につけることもできます。

ただし、休息が必要な段階の子どもは、無理に家の外に連れ出す必要はありません。

居場所の例は、後で紹介します

家庭を「子どもが安心して過ごせる居場所」にすることも重要です。そうすることで、子どもは家を足がかりにして、家の外にも出ていきやすくなります。

こちらも、「あなたの子ども」にとっての具体的な方法は、専門家と相談しながら考えていきましょう。

■家で過ごす子どもの昼夜逆転やゲーム・スマホ依存については、次の記事をご覧ください■
「昼夜逆転はいつか治ります!」わかっちゃいるけど……「いったいいつまでそのままでいいの?」のジレンマに効く6つの視点
「ゲームやスマホの禁止はNG!」わかっちゃいるけど……「いったいいつまでやらせてていいの?」のジレンマに効くチェックポイント5つ

保護者の対応法の関連記事

■その他、「不登校の親にできること」や、「親の心構え」などについては、下記の記事をご覧ください■
意外にやれていない? 不登校ジャーナリストが教える、保護者ができること6
人気記事のまとめ〜親の心構え・できること・やるべきこと〜

「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」への保護者のNG対応

「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」についての、保護者のNG対応を紹介します。

前章の「対応法」の裏返しと言えるかもしれません。

もちろん、保護者を不安にさせるためのものではありません。これまでにNG行動をとっていたとしても、専門家と相談することで、「これから」のことは変えていけます

NG①「甘えだ」「学校に行け」と言う(怒る、無理やり学校に行かせる)

「学校行きたくない」と言う子どもに、「それは甘えだ」と返したり、怒ったりしないでください

また、無理やり学校に行かせることも控えましょう

「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」は、子どもからのSOSです。

学校に行かないこと(行き渋り・不登校)に伴う苦労や不利益も、たしかにあります。

たとえば、勉強が一時的に止まる、人とのコミュニケーションが減る、保護者が仕事との兼ね合いを考える必要があるなどです。

しかし、勉強もコミュニケーションも取り戻せます

まずはゆっくり休ませましょう。

「子どもの『学校行きたくない(行き渋り・不登校)』と親の仕事」については、記事「不登校の子どもがいたら、仕事はやめなくてはいけないの?」もご覧ください。

NG②真剣に取り合わない

子どもは、勇気を振り絞って「学校行きたくない」と言っています。

子どもの多くは、「学校には行った方がいい、行かなくてはいけない」と思い込んでいます。

また、「学校を休みたいなんて言ったら、怒られるかもしれない」と思っています。

前項で「怒らないで」と言いましたが、かと言って軽くあしらうのも避けてください

子どもは、「保護者が自分の話を真剣に聞いてくれている」と思うことで安心し、いろいろなことを相談しやすくなります。

NG③原因を問い詰める

子どもから「学校行きたくない」と言われると、つい「どうして?」と聞いたり、その理由を「解決」しようとしたりするかもしれません。

しかし、無理に理由を聞かないでください

「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」はさまざまな原因で起こりますし、いくつもの原因が複雑に絡まり合っていることもあります。

また、子ども自身も自分の気持ちを整理・言語化できないこともあります。

明確な、これといった原因がないこともあります。

そして、「原因・理由」の追求・解決には、「次の一歩」に進むためにはあまり意味がないこともあるのです。

原因・理由がどうであれ、まずは休ませましょう。

ただし、いじめや犯罪の被害に遭っている、病気や障害が関係しているなど、状況確認をしたほうがよいケースもあります。この場合も、子ども本人を問い詰めるのは控えてください。

いじめや犯罪の可能性については、学校や仲のいい保護者と情報を共有しましょう病気や障害については、医療機関に相談してください

NG④保護者だけ、家庭だけで抱え込む

子どものことを、保護者だけ、家庭だけで抱え込まないようにしましょう。

「わが子のことなのだから、親の自分がなんとかしなければ」と思うかもしれません。

しかしこれまでに、本当にたくさんの保護者と専門家が、あなたと同じような悩みと向き合ってきました。

専門家に相談することで、保護者だけ、家庭だけで抱え込むよりも、きっといい対応が早めに見つかるはずです

相談先の例は、次章で紹介します。

保護者のNG行動の関連記事

■その他、不登校の親のNG行動については、下記の記事をご覧ください■

「親がしてはいけないこと」20年の記者経験で得た結論
「親がしてはいけないことが2つあります」『不登校新聞』編集長が語る「不登校きほんのき」
「不登校だから〇〇禁止」が親の対応としてNGな理由

子どもの「学校行きたくない」を相談できる専門家の例

子どもの「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」について相談できるところは、公共・民間を問わずたくさんあります。

相談先がお住まいの近くにない場合も、電話やメールで相談できるところも多いです。ぜひ積極的に利用してみてください。

さまざまな知見を持った相談先と話すことで、「子どもにどのように接するべきか」「今の学校の登校再開を目指すべきか」「別の進路を選ぶべきか」など、悩みの解決策がより具体的に見えてくるはずです

また、相談先とは相性があります。1つの相談先が合わなかったとしても、「もうダメだ」とあきらめないでください。「ここは合わなかったな。次を探そう」と切り替えると、保護者も子どもも気持ちが楽になります。

相談先①不登校の支援団体

現在の日本には、不登校の支援団体、フリースクール、不登校に詳しい学習塾など、不登校関連の民間団体がたくさんあります

これらの団体には、それぞれに独自の理念、支援方法、事例、ノウハウなどがあります。

例えば、「〇〇市 不登校 支援団体」「〇〇県 フリースクール」などとインターネットで検索すると、お近くの団体が見つかります。

また、遠方からオンラインで相談できる団体もあります。

見つけた団体の理念や支援が子どもに合いそうなら、問い合わせてみましょう。

相談先②公的な相談窓口

市区町村などが運営する公的な相談窓口もあります。

  • 児童相談所、児童相談センター
  • 教育センター
  • ひきこもり地域支援センター
  • 発達障害支援センター

自治体によって名称や機能が異なる場合もあります。お住まいの自治体の相談窓口については、市区町村の公式サイトや代表電話で確認しましょう。

相談先③不登校の「親の会」

全国各地に、不登校の子どもがいる保護者同士が集まる「親の会」があります。

親の会では、会の目的によって、お互いに悩みを相談したり、有益な情報を交換したり、雑談をしたりすることができます

同じ悩みを共有できる方が近くにいるだけで、抱えている不安がやわらぐこともあります。

インターネットで、「お住まいの都道府県・市区町村名」と「不登校 親の会」を組み合わせて検索すると、お近くの会が見つかります。

①の民間の相談先と同様に、オンラインで参加できる会もあります(オンラインコミュニティ「親コミュ」はこちら)。

見つけた会が合いそうなら、ぜひ参加してみてください。

相談先④医療機関

一見「甘え」のようでも、子どもの「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」には、病気や障害が関係することがあります

そうした可能性がある場合には(または、その可能性をなくしたい場合には)、ためらわずに医療機関へ相談してください。

相談先⑤在籍している学校

子どもの在籍している学校も、相談先の候補となります。

子どもが信頼している先生などがいれば、相談してみましょう。「今の担任」以外にも、相談先の候補はいます

  • 去年までの担任
  • きょうだいの担任
  • 学年主任
  • 教頭・副校長
  • 校長
  • スクールカウンセラー
  • 養護教諭

家庭ではわからない学校での様子や、成績・出席日数などを踏まえた上で、具体的な対応を一緒に考えることができるかもしれません。

学校にはすでに相談していて、対応に違和感があった場合には、無理に相談を続ける必要はありません。転校・進級・卒業に関わる情報などは受け取れるように、負担にならない最小限の事務連絡は保ってください。

相談先⑥その他

■その他にも、お悩み相談の窓口を、下記のページで紹介しています■
お悩みのあるあなたのために、相談先一覧をまとめて紹介します
リンク先は、不登校オンラインと同じく株式会社キズキが運営する「不登校や中退などの方々のための完全個別指導塾・キズキ共育塾」のウェブサイトです)

おもに「子ども・若者」本人のための相談先を掲載していますが、保護者が利用できるものもあります。ぜひ参考になさってください。

保護者から子どもに、「家族に言いづらければ、こんな相談先があるよ」と伝えることもできます

「今在籍している学校やクラス」以外に過ごせる居場所の例

今在籍している学校やクラス以外に、子どもが昼間に過ごせる居場所はたくさんあります(前章の「相談先」と一部重複します)。

ここでは名称のみ紹介しますので、参考のリンク先もご覧ください。

  • フリースクール
  • 教育支援センター(適応指導教室)
  • 保健室・別室
  • 学校内フリースペース
  • 塾や習い事
  • 通信制高校
  • 不登校特例校
  • 夜間中学

■参考:不登校中の居場所とは? 本当に必要な居場所の条件を解説
リンク先は、不登校オンラインと同じく株式会社キズキが運営する「不登校や中退などの方々のための完全個別指導塾・キズキ共育塾」のウェブサイトです)

保護者は、子どもが安心して甘えることができるように

この記事をご覧の保護者の方は、「子どもが言う『学校行きたくない』なんて甘えだ」と思ったこともあるかもしれません。

そのとき考えた「甘え」は、例えば「学校に慣れないことへの甘え」「勉強ができないことへの甘え」「苦手な授業や先生から逃げたい甘え」などではないでしょうか。

子どもは、一人の人間ではあるものの、文字どおりまだ「子ども」です。

子どもは、そうした「苦手」や「嫌い」から離れたり、うまく対応したりするための手段や知識が少ないのです

大人であれば、苦手な仕事からは自分の意思で転職することができます。
会いたくない人に会わないことも、ある程度はコントロールできるでしょう。

もちろん、「大人であれば、それらはカンタン」なわけではありません。

しかし、「子どもにとっては、より難しい」ということは理解していただけるのではないでしょうか。

また、子どもは経験も知識も少なく、心も体も成長過程で、大人から見れば「ささいなこと」が、心身に大きな影響を及ぼすこともあります

「子ども自身が学校に行きたくない理由をうまく整理できていない」こともよくあります。

子どもは、もうがんばりきった後なのです。

そんな中、保護者の方に甘えること(甘えることができること、愛情深く接してもらえること)は、子どもにとって大きな救いとなります

どうか専門家と相談しつつ、子どもが保護者に適切に甘えられるようにしてください。

学校を休んだら、勉強が気になる。
学校を休んだら、将来は大丈夫だろうか。
学校を休んだら、逃げ癖がつかないだろうか。

大丈夫です。

「学校に行かないこと」をカバーする方法は、本当にさまざまにあります

「じゃあ、うちの子に役立つ、その具体的な方法をいますぐ教えてほしい!」と思うかもしれませんが、子どもも保護者も、家庭の環境も学校も千差万別。

共通する「基本的な対応」も多くありつつ、「そこから踏み込んだ具体的な方法」は家庭や子どもによって異なります。

ぜひ、専門家の経験や知識を利用してください。

「甘え」以外の、学校行きたくない(行き渋り・不登校)の原因は?

子どもが「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」の原因には、甘え(と保護者に見えるもの)以外に、どんなものがあるのでしょうか。

ここでは、「小中学生が不登校となった主たる原因」について、文部科学省の調査を紹介します(出典:文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)

※この調査は学校の先生が回答したものであり、「児童生徒や保護者の見解とは異なる」という指摘もあります。参考としてご覧ください。

小学生の「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」の原因

小学生では、次のようなものが不登校の主たる原因とされています。

■学校に係る状況

  • いじめ:318人(0.3%)
  • いじめを除く友人関係をめぐる問題:6,912人(6.6%)
  • 教職員との関係をめぐる問題:1,901人(1.8%)
  • 学業の不振:3,376人(3.2%)
  • 進路に関わる不安:277人(0.3%)
  • クラブ活動・部活動への不適応:30人(0.0%)
  • 学校の決まり等をめぐる問題:786人(0.7%)
  • 入学・転編入学・進級時の不適応:(1,914人(1.8%)

■家庭に係る状況

  • 家庭の生活環境の急激な変化:3,379人(3.2%)
  • 親子の関わり方:12,746人(12.1%)
  • 家庭内の不和:1,599人(1.5%)

■本人に係る状況

  • 生活リズムの乱れ・あそび・非行:13,209人(12.6%)
  • 無気力・不安:53,472人(50.9%)

■該当なし:5,193人(4.9%)

中学生の「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」の原因

中学生では、次のようなものが不登校の主たる原因とされています。

■学校に係る状況

  • いじめ:356 人(0.2%)
  • いじめを除く友人関係をめぐる問題:20,598人(10.6%)
  • 教職員との関係をめぐる問題:1,706人(0.9%)
  • 学業の不振:11,169人(5.8%)
  • 進路に関わる不安:1,837人(0.9%)
  • クラブ活動・部活動への不適応:839人(0.4%)
  • 学校の決まり等をめぐる問題:1,315人(0.7%)
  • 入学・転編入学・進級時の不適応:7,389 人(3.8%)

■家庭に係る状況

  • 家庭の生活環境の急激な変化:4,343人(2.2%)
  • 親子の関わり方:9,441人(4.9%)
  • 家庭内の不和:3,232人(1.7%)

■本人に係る状況

  • 生活リズムの乱れ・あそび・非行:20,790人(10.7%)
  • 無気力・不安:101,300人(52.2%)

■該当なし:9,621人(5.0%)

子どもは、甘え以外にもさまざまな理由で「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」となる

子どもがさまざまな理由で「学校行きたくない」となることをご理解いただけたと思います。

小学生も中学生も、「生活リズムの乱れ・あそび・非行」「無気力・不安」という、「甘え」に近い原因が多いように見受けられます。

ただし、これはあくまで「学校の先生が回答したもの」で、実際の理由とは異なる可能性もあります。

また、例えば、生活リズムが乱れていたとしても、「なぜ」生活リズムがずれているのかは言及されていません。

そして、多くの子どもは、「学校は、行くものだ(学校には、行かなくてはいけない)」と思い込んでいます

そんな子どもたちが「学校行きたくない」と本気で言葉にする。

それは、まぎれもなく子どもからのSOSなのです。

「甘えかどうか」を重視するよりも、「子どもからSOSが出ている」ことに着目してください

保護者が「甘えではないか」と思いがちな「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」の流れ、子どもの行動例、親の対応例

「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」という状況の子どもには、ある程度共通する段階・進行があります。

前駆期、進行期、混乱期、回復期という流れです(もちろん、あてはまらない子どももいます)。

特に保護者が「甘えではないか」と思いがちな場合の「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」について、各段階の子どもの行動例と、保護者にできることの例を紹介します。

【①前駆期】
何らかの要因で、心理的な安定が崩れていき、学校を休み始めるまでの期間

■子どもの、具体的な行動の例

  • 身体的な不調を訴え、断続的に休むようになる。決まった曜日に休むこともある。
  • 前日の夜「明日は学校に行く」と言うが、朝になると起きてくることができなかったり、起きても長い時間トイレから出てこないこともある。

■親にできる、具体的な行動の例

  • まず子どもの気持ちをじっくり聴く。
  • 本人の良いところを認め、小さな努力をほめながら励ます。

【②進行期】
不登校が始まり、心理的な落ち込みが激しくなり、やがて底で固定化されるまでの期間

■子どもの、具体的な行動の例

  • 極端な昼夜逆転になることはないが、夜遅くまで起き昼頃まで寝ている生活になる。
  • 親に強く反発することはないが、学校や勉強のことなどを言われると自分の部屋に逃げ込む。

■親にできる、具体的な行動の例

  • 朝はいつもの時間に声をかけるが無理に起こさない。本人の気持ちを聴き、一緒に問題を整理して、気持ちを前向きにしていく。
  • 身体症状が強く出ている場合には、朝起こすのをやめる。

【③混乱期】
落ち込んだ状態や無気力な状態が固定化して、改善の見込みがたたず時間ばかりが経過する、いわゆる鍋底の期間

■子どもの、具体的な行動の例

  • 昼夜逆転が改善し、午前中には起きられるようになる。
  • 学校の話題も家族でできるようになるが、本人の中での焦りや不安が少ない。

■親にできる、具体的な行動の例

  • 学習や基本的な生活習慣について、できることから少しずつ取り組ませる。自分でできることが増え自信がついてくると、外出の頻度が増えたり、活動の範囲が広がってくる。
  • 初めて取り組むことでもできないと決めつけず、一緒に取り組んでみることが大切。

【④回復期】
心理的状態が改善され、心的エネルギーが溜まり始め、一人での外出が自由になってくる期間

■子どもの、具体的な行動の例

  • 学校や勉強のことについて、家族とふつうに会話ができるようになる。
  • 行事や放課後の部活動、保健室登校など、本人の行きやすいかたちであれば、登校するようになる。

■親にできる、具体的な行動の例

  • 勉強の遅れや基本的な生活習慣についての課題について着実に対処していく。
  • 善悪の判断基準、社会に出る上で大切なこと、親として大切にしている思いなどを、恥ずかしがったり、叱ったりせずにきちんと伝えていく。

以上参考:「混合型」(旧「甘え依存型タイプ」)の特徴と留意点
(※リンク先は、不登校オンラインと同じく株式会社キズキが運営する「不登校や中退の子どもたちのための家庭教師・キズキ家学」のウェブサイトです。やや古い内容もありますが、大筋としては現在にも共通します。)

「学校行きたくない」は「甘え」と思わず、家庭だけで抱え込まず、ぜひ専門家に相談を

これまで、「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」と「甘え」の関係を紹介しました。

いろいろなことをお伝えしましたが、最初に書いた通り、大切なことは次の2つです。

  • 「学校行きたくない(行き渋り・不登校)」は、甘えではなく(甘えだとしても)子どもからのSOS
  • 子どものことは、家庭だけで抱え込まず、ぜひ専門家に相談を

子どもが不登校・行き渋りになると、保護者はどうしたらいいのかわからなくなることが多いでしょう。

また、「子どものSOSも一般論もわかった。じゃあ、うちの子どもに何をしたらいいのか(自分が何をしたらいいのか)が教えてよ!」と思うかもしれません。

だからこそ、ぜひ専門家の力を借りてください。あなたの子ども、そして保護者であるあなた自身に合わせた、具体的なアドバイスが得られるはずです

 

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