TikTok APAC GMが見た不登校。多様性があるゆえの悩み

#不登校#行き渋り

2026年8月24日、東京都渋谷区で「不登校生動画甲子園 2026」授賞式が開催されました(主催:不登校生動画甲子園実行委員会(TikTok Japan、認定NPO法人カタリバ))。今年の動画募集のテーマは、「わたしが見つけた居場所」です。

審査委員の一人を務めたのは、TikTok APAC ゼネラルマネージャーの佐藤陽一さん。佐藤さんは、日本のみならず、アジア太平洋地域のTikTokにおける責任者です。

不登校を経験した10代の作品から何を感じたのか。TikTokは、不登校の方々にどのような「きっかけ」を届けられるのか。そして、不登校に悩む子どもや保護者に伝えたいこととは。

イベント終了後、不登校オンラインが佐藤さんにお話を伺いました。

受賞作品や審査委員コメント等は、TikTok Japan公式サイトの下記ページをご覧ください。
▶︎TikTok、8/24に「不登校生動画甲子園 2026」授賞式を開催!今年のテーマ「わたしが見つけた居場所」で、cocoさんの作品が最優秀賞に決定し、TikTok LIVEで初の同時配信も実施

10代が突き詰めた自分の表現

――審査にあたって、不登校を経験された10代の方々の作品を多数ご覧になっています。特に印象に残っていることを教えてください。

佐藤:2つあります。

まず、どの作品も、ショート動画を作成するスキルの高さに驚きました。デジタルネイティブ――という言葉もすでに古いのですが――ならではというか、最初からスマホや動画がある世界で育ってきた子たちですので、現代のツールを縦横無尽に使って表現しているなというのが第一印象です。

もう一つは、各作品の表現が画一的ではなかったことです。自分の言葉や感覚を突き詰めて、「どう表現したら伝わるのだろう」と考えて作られているなと感じました。時間をかけて自分の気持ちと向き合った結果なのだろうなと思うことが多かったですね。

「不登校」という言葉は、ポジティブな文脈で語られることはあまり多くありません。しかし、不登校生動画甲子園に応募した方々は、不登校で学校に行っていない時間を、自分の中を見つめる機会として使っていたのではないでしょうか。

TikTokは「きっかけづくり」が得意

――不登校生動画甲子園に限らず、不登校の方々にとって、TikTokはどのような役割を果たせるとお考えでしょうか。

佐藤:不登校のように苦しさを抱えている人にとって、TikTokは興味のあることを探す際に情報を届けやすいプラットフォームです。実際に情報が届いている方もたくさんいらっしゃると思います。

TikTokが一番得意なのは、「きっかけづくり」なんです。「TikTokそのもので何かを変える」なんて、大それた、おこがましいことを言うつもりはありませんし、そんな力もないと思っています。ただ、きっかけをつくる力は、それなりにあるのかなと。

今回のテーマである「居場所」にしても、TikTokには、「こんな居場所があるのかもね」「こんなことが面白いかもね」「自分と同じように苦しんでいたけど、こんな居場所でこんなふうに過ごしている人がいるんだ」などと気づくきっかけが、いろんなところにたくさんあります。

不登校の方々に僕らが果たせる役割があるとしたら、この「きっかけ」なのかなと思います。

興味や楽しさで仲間とつながる

――学校に行けていないことに悩んでいる方や、それに伴って「自分には何もない」などと思っている方に、佐藤さんはどのようなことをお伝えになりたいでしょうか。

佐藤:世代っぽい話になるのですが、我々の世代の若い頃には、世間や学校が示す「当たり前」を、そのまま当たり前だと受け止めていた人が大勢いました。

だからこそ、それを当たり前だと思わない人にとっては、例えば「世間が敷いたレールに乗るのが嫌だ」「親が決めた何々は嫌だ」と反抗する余地もあったと思います。

ところが多様性への理解が進んだ今では、不登校も含めて、「世間の当たり前とは違う、ある個人の価値観」を正面から否定される機会は減っていると思います。

ただ、「当たり前と違うから攻撃してくる」わけではなくても、「実は本心ではあまりポジティブではなく思っている」ということも多いんですよね。

そういう状況では、相手が見えません。

その分モヤモヤした気持ちが残りやすいですし、「この違和感をどこに持っていけばいいんだろう」と思う子どもも多いでしょう。

これは、不登校生動画甲子園に関わるようになって思うところですね。

逆に言うと、そんな世の中だからこそ、TikTokなどを使って、今の自分が興味を持てること、楽しいと思えることを共有できる仲間を、ちょっとでも見つけることが大切なのかなと思います。仲間とまでは言わなくても、自分と同じことに興味を持っている人がいると知るだけでも。

TikTokがそういう場になる、またはそういう場の助けになるのであれば、私たちとしては非常に幸せなことだなと思っております。

また、興味や楽しいことは、変わっていっても問題ありません。永続的な「自分ってこういうもんなんだ」というものは、見つけなくたってかまいません。

親自身も自分を追い詰めない

――最後に、不登校のお子さんがいる保護者の方へのメッセージをお願いします。

佐藤:お子さんが不登校になると、親御さんは相当あせると思います。

子どもに理解を示すことが大事な場面もあれば、一方で、子どもに「ああしなさい、こうしなさい」と伝えることが大事な場面もあります。ケースバイケースで難しいところではあります。

ただ、親子だからこそ見えなくなる部分があると思います。

半歩、一歩ちょっと下がって、少し視野を広げると、
「自分が子どもの頃に経験した『当たり前』が、今の子どもたちの『当たり前』じゃないかもしれない」
「自分が歩んできた成長の仕方を、我が子が踏襲するわけではない。成長の段階や方法は違う」
などが見えてくるのではないでしょうか。

そして一番大事なことは、親御さん自身もあまり自分を追い詰めないことだと思います。

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