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【京都・舞鶴】教育から就労まで、「異端は最先端」を掲げて。NPO法人よのなか塾が届ける「不登校支援」への思いに迫る。

#不登校#行き渋り

「学校に行けない」「進路が描けない」―そんな悩みを抱える子どもたちをどう支えていくか。

ウェブメディア「不登校オンライン」を運営する株式会社キズキでは、現在、全国のNPO法人等と協働し、不登校の子どもたちの進路支援の仕組みをつくるプロジェクト「急増する『不登校・長期欠席の子どもたち』支援モデル形成事業」に取り組んでいます。
※参照:株式会社キズキ、「休眠預金活用事業」資金分配団体として「不登校・長期欠席の子どもたち」支援モデル形成事業を開始〜創業理念を基に、全国で急増する不登校生に「多様な進路の選択」を支援するモデルを構築〜

このプロジェクトに参加する各団体が、どのような想いで子どもたちに向き合い、支援を行っているのか。そのリアルな姿を届けるため、歌人・田中章義さんとともに各団体を取材しました。

第2弾は、京都府舞鶴市で活動するよのなか塾です。通信制高校・大学のサテライトから個別の学習塾、フリースクール、さらには就職支援まで、途切れることのない幅広いサポートを届けています。

「異端は最先端」という力強いキャッチコピーのもと、既存の枠にとらわれずに子どもたちへ寄り添う彼らがこの事業に懸ける情熱と、一人ひとりの個性と共に歩む「多様な将来」への願いを、田中さんに綴っていただきました。

 

よのなか塾

 

田中章義

外観

外観

異端の音が重なりあうライブハウス

京都府北部に位置し、「若狭富士」と称される青葉山を有する舞鶴市。若狭湾の支湾である舞鶴湾に面している。 

ここは戦後13年間にわたって、66万人もの引揚者を迎え入れた街として知られる。「引揚」とは第二次世界大戦後、旧満洲(現・中国東北部)や朝鮮半島をはじめ、多くの国や地域にとり残された日本人の帰国に関した事業のことだ。

約660万人もの「引揚」の人々の1割を、この舞鶴市は受け入れた。広島県呉市とともに、家庭料理の定番「肉じゃが発祥の地」も名乗る舞鶴市。

この舞鶴市に、さまざまな事情を抱えたこどもたちの学習支援を2014年からおこない続けている特定非営利活動法人がある。それが「よのなか塾」だ。

京都府吹奏楽コンクール高校大編成の部で5年連続金賞を受賞し、全国高校総合文化祭吹奏楽部門実行委員長も務めた元高校教員の早田太郎さんが、妻の礼子(あやこ)さんとともに教え子からの相談をきっかけに立ち上げたのが「よのなか塾」だった。

途中から、通うこどもたちの食生活を心配し、「なかよし食堂」と名づけた“こども食堂”の運営も始めた。

親が忙しくて食事の用意をできないこどもたちがいつも同じカップラーメンばかり食べている状況を知り、子どもの成長にとってとても大切な食事のサポートをすることにしたのだった。

幸い、隣町でレストランを営む人との出会いがあり、毎週1回、自分の店を早く閉めて、料理をつくりに来てくれた。フードバンクや地元企業からの支援も得ることができ、食材が集まった。

やがて、こうした「こども食堂」などの運営は「特定非営利活動法人よのなか塾」がおこない、礼子さんが代表、個別学習指導などの収益事業は「非営利株式会社よのなか塾」を立ち上げ、太郎さんが代表となって、2つの組織が相互に支え合う体制を確立した。

NPOだとすぐに必要な支援(事業)を展開することができないので、スピーディーにおこないたい事業は、「非営利株式会社よのなか塾」が担うようになった。

一人親や生活支援が必要な世帯など、さまざまな事柄を抱えた家庭の子どもたちを、学習面から生活面まで支援する早田夫妻の尽力が評判を呼び、舞鶴市以外からも生徒が集まり始めた。

2018年には、ひきこもりや不登校などの子どもを減らしたいという思いから、自分に合ったペースで高校卒業を目指すことができる「代々木高等学校北京都キャンパス」を開設。レポート指導は、個別指導形式でサポートし、週1回からの登校で高校卒業を目指せる仕組みを構築した。

その後、現在では星槎大学とも連携し、サテライト教室を開設。高校卒業後の進路の一つとして、学びの継続を確保するシステムを創りあげた。

「よのなか塾」は、さらに就職支援にも取り組み始めた。全ては目の前のこどもたちに今、必要なことを模索し続けた結果だった。

日々の様子

日々の様子

「よのなか塾」は現在、フリースクールも運営し、この分野での若者支援にも力を入れている。それが、休眠預金を活用した事業へのチャレンジにもつながった。

全国でわずか5団体のみが採択された、「急増する【不登校・長期欠席の子どもたち】支援モデル形成事業」助成採択団体に、関西地区で唯一、「よのなか塾」が認定されたのだ。

不登校の生徒たちが増えているにも関わらず、全国的に地域の行政は充分に対応ができていない。不登校のこどもたちや若者たちの置かれている状況や背景、社会全体で取り組むべき事柄について、もっと世の中に関心をもってほしいという思いが、早田さん夫妻にはあった。

「異端は最先端」――これは「よのなか塾」のキャッチコピーだ。人と違っても、自分自身や自らの可能性を否定しないでほしい、というメッセージが込められている。世の中を変えていくのは、いつも異端と言われた人たちなのだ。

“一人一人に合った新しい学びの選択肢を”提供すべく、こどもたち・若者たちと向き合い続ける「よのなか塾」。

「よのなか塾」はいつも、「あるがままを受け入れる」ことを公言している。学校があって生徒がいるのではなく、学びたい気持ちがあって、そこが学ぶ場所=学校となるのだ、と。

一人一人の姿かたちが違うように、学び方も人それぞれ、多彩であっていい。

そんな中、お互いを認め合い、自分の個性と出会い、それを磨きながら、輝かせていくことができたら、どんなにすばらしいだろう。そんな一人一人が助け合い、支え合う。誰も否定しない、否定されない中で、育まれていくものの尊さを、「よのなか塾」は知っているのだった。

安心して、呼吸ができること。
自分で自分に頷くことができること。
そこから始まる物語は、しなやかでとても剛(つよ)い。それを、早田夫妻は体験的に認識していた。

立ち上げからわずか12年でぐんぐん成長し、加速度をつけ、世の中に認知されている「よのなか塾」。

今回、インタビューし、これまでの活動とこれからのビジョンを取材する中、私には「よのなか塾」がまるごと“ライブハウス”に思えた。

ライブハウス、と言っても音楽だけをする場所ではない。吹奏楽の演奏にさまざまな楽器があるように、ここではいろいろなものを、自分を奏でる「楽器」とすることができる。

「なかよし食堂」で料理の楽しさに目覚めた人は、まな板の上で刻む包丁の音も、誰かの笑顔を生み出す「音符」なのだと気がつくだろう。

不登校だった日々を乗り越え、フリースクールで好きな子の話を友達とする会話も、実は唯一無二のJポップなのかもしれない。

日々の様子

日々の様子

「よのなか塾」が運営する「北京都若者サポートステーション(通称サポステ)」は、現在働いていない15歳から49歳までの人たちの就職支援をおこなっている。いくつになっても、本気で働きたいという夢に踏み出し、その夢が叶った時、「よのなか塾」のスタッフと交わすハイタッチも未来に響く、フォルテッシモの音符なのではないか。

ライブハウスの「ライブ」には、「生きる」という意味がある。この場所で、実感できる心臓の音も、明日への旋律(しらべ)となるだろう。

「よのなか塾」には、楽器以外の楽器がたくさんある。夢の実現への伴奏をしてくれる仲間もいる。この場所で、出逢えた人たちと、自分のこれからの「主旋律」となるものを、じっくり、ゆっくりと探していけばいい。

不安で、今は自分で歌えない人も、早田夫妻やスタッフや集う人々が奏でてくれる“虹色のオルゴール”の音色に心と耳を傾けてみるのもいいのではないか。

「よのなか塾」――ここはみんなが活きる、そして、生きる、「ライブハウス」なのだ。詩や小説が書きたくなったら、「鉛筆」を“未来への指揮棒(タクト)”にすればいい。漫画や絵が描きたくなったら、筆や絵の具で、自分だけのジャケットやライブ空間の美術を創出すればいい。デザイナーになる夢がふつふつと湧きあがったら、未来の自分が笑顔になるオリジナルな衣装をつくってあげるのもいい。

ここでは、誰もが唯一無二のアーチストなのだ。それが、早田夫妻が仲間とともに生み出し、縁のあったみんなで築いている「よのなか塾」という「ライブハウス」空間なのだった。

「よのなか塾」は、これまでスタッフ募集の求人広告を出したことがないという。縁ある人たちがいつしか一緒に働きたい、とスタッフになっていくのだ。

ここに、「よのなか塾」の強さがある。

居心地が良く、ここなら自分が自分らしくいられそうだと思うからこそ、スタッフになりたいと希望してくれるのだ。
奏でる音色は、やがて、自分たち以外の誰かの笑顔にもつながってゆく。

空間

空間

「よのなか塾」で生徒だった松崎彩乃さんは今、スタッフとして、みんなの夢の「演奏家」の一人に加わった。

彼女は次のようなメッセージを早田夫妻に寄せてくれた。

「何事もこどもたちのことを第一に考え、頭ごなしに生徒の意見を否定せず、受け止めてくれる。早田太郎さん・礼子さんはそんなお二人です。
その温かさは私たちスタッフへも同じで、日頃のたわいもない会話はもちろん、支援の進めかたに迷ったり悩んだりした時も、私たちの心に寄り添って、いつも真剣に相談に乗ってくれます。お二人の存在があるからこそ、私たちは、安心して仕事に向き合うことができています。
感謝の気持ちでいっぱいです。
 
私自身は、高校なんて行かなくてもいいと思っていました。けれども、いろんな縁があって「よのなか塾」の通信制高校を知った時は、ここしかないと思いました。
 
みんなと違うことを引け目に感じて、自分をないがしろにしてきたけれど、この学校ではそれさえも個性として輝ける。自分は自分でいいのだと思うことができました。
 
みんないろんな過去を持ってこの場所に来ています。ありきたりな言葉かもしれないけれど、これからこの場所を利用する人にも、あなたは一人ではないし、ここでは世間の枠にはまらない大人たちがあなたを待っていると伝えてあげたい。
 
私は卒業後、別の企業で正社員として働いていました。けれども、諸事情によって退職しました。その後、高校時代からお世話になっていた、「よのなか塾」のサポステ(北京都若者サポートステーション)を再び利用しました。何回か面談を重ねた時、「よのなか塾で仕事する?」と声をかけてもらいました。私に支援なんてできるのかな、と思いましたが、それ以上に、目の前の生徒の力になりたい、自分の経験やこの年齢だからこそ共感できる部分があるはずだ、と思い、「やりたいです!」と伝えました。
 
利用してきた私が思う「よのなか塾」の良さは、個別塾、フリースクールから通信制の高校・大学、就職支援まで幅広いサポートがあるところです。だからこそ、環境が変わっても、「一貫性をもった支援」ができ、こどもから大人まで誰でも安心できる居場所として利用できます。
個性豊かで温かいスタッフに囲まれた雰囲気の中で、それぞれの成長のステップや歩みに寄り添えることが、最大の魅力です。
 
私の夢は、「よのなか塾」をどこよりも安心できる居場所にすることです。そして、何かあれば、すぐに帰ってこられる場所にすることです。そのために、私自身も、生徒たちにとって、どんなことでも話しやすく頼りやすい支援者になりたいと思っています」

利用者だった一人が、こんなふうに語ることができるのが、「よのなか塾」12年の成果であり、新たな未来でもあるのだろう。

家庭料理の定番「肉じゃが発祥の地」である舞鶴市。ここで「肉じゃが」をみんなと食べることができたら、どんなに美味しいだろう。

戦後13年間にわたって、66万人もの傷ついた引揚者を迎え入れた舞鶴市。ここに今、こどもたちや若者たちをあたたかく迎え入れてくれる「よのなか塾」という居場所がある。時代を超え、ここは新たな未来を生み出す「ココロの桃源郷」なのかもしれない。

誰もが違う音符だからこそ、豊かなハーモニーは生まれる。個性ある音符たちが雑多だからこそ、その日その日の唯一無二の演奏も愉しくなる。

空間

空間

立ち上げから12年を経て、今、早田礼子さんはこんなふうに語っている。

「自分たちにできる範囲で、目の前の子どもを支えたい」という思いから、子どもたちの声に応え続けた結果、今の「よのなか塾」の形になりました。大きな力にはなれなくても、子どもたちに寄り添い、安心して本音を話せる場所でありたい。学校でも家庭でもない、子どもたちの「第3の居場所」を守り続けること。それが、「よのなか塾」が大切にしている想いです。
 

集まる人の背景は十人十色ですが、お互いの良いところを認め合い、誰も否定されない空気があるからこそ、子どもたちは居心地の良さを感じてくれているのだと思います。このような居場所は、私たちだけの力でつくられたものではありません。たくさんの方に応援して頂き、活動に関わってもらっているおかげです。「よのなか塾」に関わってくださっている皆さんに深く感謝をしています」

次の曲は、早田太郎さんが高校時代から好きだったブルーハーツの「裸の王様」だ。

どうでもいい事 たくさんかかえて
くだらない事で ビビることはない
見えなくなるより 笑われていたい
言えなくなるより 怒られていたい
     (作詞 真島昌利)

曲の中で主人公は懸命に王様は裸であることを叫ぶ。そして、さらに、「裸の王様 何が見えますか? 裸の王様 何を学んだの?」と問いかける。

あの頃の問いを、早田さんは今も自分に語りかけているのかもしれない。早田さんの心に今日も高校時代の早田さんがいるからこそ、この世代の心の変化や機微に敏感でいられるのだろう。

全国高校総合文化祭吹奏楽部門実行委員長も務めた早田さんが今、指揮棒(タクト)を振っているものは、とてつもなく大きな交響曲の楽章なのかもしれない。早田夫妻が今日も、縁のある人たちとともに奏でる音色を私は心から信頼している。

田中章義
(歌人、元国連WAFUNIF親善大使)

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