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なぜ「桃鉄 教育版」はフリースクールに無償提供されているのか。 原作者が夢見てきたこと

#不登校#行き渋り#桃鉄

↑メインビジュアル:桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~(画像・KONAMI提供)

日本の地理を「桃太郎電鉄(以下、桃鉄)」で覚えたという人は少なくありません。私自身もそのひとりです。中学2年生から不登校になり、学校へ行かずに育った私にとって、「桃鉄」はただのゲームではありませんでした。富山のバット工場や山陽の工業地帯の存在を教えてくれた教材でもありました。

その「桃鉄」が現在、学校やフリースクールなどの教育現場に無償提供されています。正式名称は、ブラウザ版『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~(以下、桃太郎電鉄 教育版)』。なぜ「桃鉄」は教育版を作り、無償で提供するようになったのでしょうか。コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)のPR担当者に話を聞きました。

 

石井しこう

そもそも「桃鉄」とはどんなゲームか

「桃鉄」は、プレイヤーが鉄道会社の社長となり、日本全国を巡って日本一の資産家を目指す、すごろく形式のボードゲームです。第1作は、1988年に発売されました。サイコロを振って目的地を目指しながら、停まった駅でご当地の名産品や企業などの「物件」を買い集め、資産を増やしていきます。遊びながら自然と日本各地の地名や特産品、地理的特徴に触れられるため、楽しみながら地理を学べるゲームとして、長年幅広い世代に愛されています。

教育現場への広がり

『桃太郎電鉄 教育版』の提供が始まったのは2023年。小学校から大学まで1万4000校を超える学校に対してIDが発行されています。そのうち、小学校は約7,900校となり、これは全国の約4割にあたる数になります。

KONAMIの予想を上回る広がりを見せるなかで、フリースクールからも利用を望む声が寄せられたそうです。KONAMIは「少しでも学びの力になれば」という思いから、2025年春からフリースクールなどへの無償提供を開始しました。

主な条件は「学校や教育機関単位、教育委員会・地方自治体等の組織単位で申し込むこと」。教育機関や各組織の会員数や事業規模の制限はありません。現在も申し込み可能です。

プレイヤーが駅に止まると周辺情報が提示される/(画像・KONAMI提供)

プレイヤーが駅に止まると周辺情報が提示される/(画像・KONAMI提供)

なぜ無償提供なのか

では、なぜ「桃鉄 教育版」を無償で提供することになったのでしょうか。そこには、原作者・さくまあきらさんの思いがありました。

「桃鉄」はもともと、さくまさんが全国各地を旅して、その土地の魅力をゲームに落とし込んできた作品です。各地の名産品や観光地、歴史上の人物などが登場するのは、「日本のおもしろさを知ってほしい」という思いがあったからこそ。その思いは、いつしか「学校で使ってもらえたら」という願いにも発展していったのだそうです。

そんななか、立命館小学校の正頭英和先生からKONAMIへ、「桃鉄を授業で使えないか」との提案がありました。正頭先生が教育版の開発にあたって要望したのは、以下の2点です。

①「無料で提供してほしい」
②「素材のまま提供してほしい」

少額でもお金がかかれば、学校での導入のハードルは上がってしまいます。また、正頭先生は「素材は素材のまま出してください。料理(授業)は先生が考えます」とKONAMIに伝えたそうです。

教育版だからといって、クイズや計算問題などの機能を追加して「勉強っぽく」するのではなく、そのままの「桃鉄」を提供し、使い方は現場の先生に委ねる。そうした考え方が大事にされたのです。

その結果、「桃鉄」は地理や歴史だけでなく、算数の授業などでも使われるケースもあるそうです。

教育版ならではの工夫

もちろん、Switch版「桃鉄」とまったく同じというわけではありません。Switch版との最大の違いは「貧乏神がいない」ことです。ゲームとしては盛り上がる要素ですが、限られた授業時間のなかで、持ち金が変動しすぎないように調整するためです。

他にも、以下のような変更が加えられています。

  • 攻撃的なカードを使用するときに、特定の相手を狙い撃ちできない
  • 学びたい地方を選んでプレイできる
  • 管理者(先生)が授業の進行に合わせて、ゲームの開始・停止をコントロールできる

楽しさを残しつつ、授業で使いやすいように細かな調整がされているのです。

授業の内容や進行に合わせて使用できるよう、地方を選択することもできる(画像・KONAMI提供)

授業の内容や進行に合わせて使用できるよう、地方を選択することもできる

自分たちの町を「桃鉄」にできる新機能も

削られた機能がある一方で新機能もあります。『桃太郎電鉄 教育版』には、「マイ桃鉄」という新機能も加わりました。これは、ゲーム内の任意のマスを物件駅として自由に編集できる機能です。

子どもたちは、自分たちの住む町や関心のある地域について調べ、観光名所、会社、工場、農産物、水産物などを「物件」として「桃鉄」の中に反映できます。つまり、ただ用意された地図で遊ぶだけでなく、自分たちで調べた地域の魅力を、ゲームの形で表現し、クラスメイトや仲間と共有できるようになったのです。

マイ桃鉄の画面(画像・KONAMI提供)

マイ桃鉄の画面(画像・KONAMI提供)

ゲームから始まる学びの可能性を

不登校の子どもたちにとって、学びは必ずしも教室の机から始まるとは限りません。ゲームから始まることもありますし、雑談から始まることもあります。

かつて多くの子どもたちが、「桃鉄」で日本地図を覚えました。その「桃鉄」がいま、学校だけでなく、フリースクールにも届き始めています。それは単に「ゲームが教材になった」という話ではありません。

子どもたちが日本各地のおもしろさに出会い、人とつながり、学び直すきっかけをつくる。『桃太郎電鉄 教育版』の無償提供には、そんな可能性が込められているのだと私は思っています。

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